ベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」はきわめて独創的な作品である。まず歴史的な立ち位置として、ベートーヴェンが第9交響曲において、交響曲というジャンルに声楽を抱合させたわけだが、その形を始めて引き継いだのがこの作品ということになる。この作品が成立したのが1839年だから、ベートーヴェンの第9から15年ということになる。決して交響曲というジャンルが主流ではなかった
フランスにおいて、最初に「声楽付き交響曲」が引き継がれたのも興味深い。
次に、「ロメオとジュリエット」は声楽を伴っているのだが、ロメオとジュリエットに当たる独唱者が存在せず、この二人の描写は管弦楽によって行われる。ベルリオーズはファウストも劇音楽する際に脚本を大きく変更しているし、その音楽表現においては、
シェイクスピアであっても「素材」に過ぎないということでしょう。
有名なのは「マヴ女王のスケルツォ」といわれる第4楽章と、終楽章になるだろうか。ブーレーズの演奏は聴いてみての感想であるが、「いかにもブーレーズ」というスタイルで、克明な表現によっており、客観性の保たれた表現である。第4楽章はその緻密な計画性がきわめて効果的に出ていて美しく響く。グロテスクさはさほどないけれど、非常に抵抗なく耳に入る。音色はやや乾燥した感じで、時としてもっと水分が欲しいと思うけれど、乾いた清潔感は好ましい。序曲にあたる冒頭部分などその乾いた感性が如実に出ていると感じられた。
また、このアルバムには併せて収録されている歌曲集「夏の夜」は、普通女声によって歌われるが、ここでは男声も含めて曲によって独唱者を代えているところが面白い。なかなか新鮮に感じられた。