初めて聴く音楽を昔は「理解しよう」と努めましたが、少しずつ年を重ねるごとに「感じること」に重点を置くことで新しい音楽世界との出会いも楽しいものになっていきました。
奇才でもあり天才でもある
イタリアのチェリストのマリオ・ブルネロ(第8回チャイコフスキー国際コンクール優勝者)の奏でる3つの無伴奏
チェロ(といいながら他の楽器の音や声が含まれるわけですが)を収録したこのアルバムも初めて接した音楽ですが、その魅力に引き込まれました。
1曲目のジョバンニ・ソッリマ作曲の『コンチェルト・ロトンド』は4つの楽章に分かれています。現代音楽と言うより民族音楽的な要素もあり、何の楽器がどのように重ねられているのかが分からないような混然一体感もあり不思議な体験をもたらしてくれました。
2曲目のピーター・スカルソープ作曲の『レクイエム』は、ボーズ修道院グレゴリオ聖歌隊によるグレゴリア聖歌を伴うわけですが、ほとんどが
チェロ独奏で奏でられています。それぞれの
ラテン語が意味する世界を
チェロ独奏で表現しており、『レクイエム』の通常文に慣れ親しんできたこともあり、奏でられている意味合いはそのまま受け取ることができました。聖歌隊の天上の声と
チェロの現世との対話を聴きとることができるでしょう。
3曲目のジャチント・シェルシ作曲の『カルロ・マーニョの葬儀』はマウリツィオ・ベン・オマールのパーカッションを伴った曲でした。洋の東西を問わず、葬儀の厳粛さと死への畏怖が感じられる作品ですが、現代音楽の特徴とも言える無調性音楽は演奏者の力量が非凡なるがゆえに聴く気になるものだとも思いました。
いずれも 2004年10月25〜27日に
イタリアのボーズ修道院教会で収録されたものです。なおリーフレットの解説は沼野雄司氏によるもので、この珍しい現代音楽のバックグラウンドを知る上で参考になりました。