女性ロックボーカリスト時代の黎明を告げる記念すべきロックチューンSomebody to Loveと、ドラッグ体験に不思議の国の
アリスを絡めた歌詞で知られるWhite Rabbitの収録作として一般的には語られる事が多いようだが、意外にも彼女のリードはこの2曲だけで他はコーラス、しかも全て低音担当なのが特徴である。男性陣とスリックのボーカルが絡む曲が7曲(tr.1-4,6-8)、これらの歌声の混じり具合が実は肝で、聴き込んでいくとわかるこのアルバム最大の魅力かと思う。
ボ・ディドリー調のリズムに乗りながらスリックがオブリガート的な伴唱を決めるShe Has Funny Carsや、ビーチボーイズの完璧な調和とは異次元にあるフリーキーな掛け合いが絶妙のMy Best Friendが典型。繊細な男性リードボーカルの下側から低く温もりのある「女性」が包み込むTodayのような曲があるかと思えば、背後から凄みの効いた「おんなの声」がうねうねと絡みゾクゾクさせられるD.C.B.A.-25のような曲もあって、男女混声ロックボーカルの醍醐味が十二分に楽しめる。60年代Summer of Loveの香りも高いこのアルバム、一押しです。