おれんシリーズの3作目の本作は、事件ものが中心だった前作『天女湯おれん』に比べ、おれんに関わる様々な人の恋模様を中心にストーリーが展開されます。
本作では、お馴染みの天女湯ファミリー(おれん、色男の弥助、元泥棒の与平、元遊女のおくめ、小僧の杵七、岡っ引き栄次郎親分、定町廻り同心の郡司主馬助などなど)に、新しいメンバが加わります。
その名も、鼠小僧ならぬ鼬(いたち)小僧こと、与吉。
そしておれんの新たな恋のお相手は、旗本次男の深津昌之助。
相変わらずの頼りになる姐さんっぷりのおれんは、今回も自ら、あちこちに世話役を買って出ます。
武家女の駆け落ちを手助けしたり、年若い男女の恋を実らせたり、義父に虐待を受ける幼女を救ったり、頼まれもしないのにご縁を結んであげてみたり。
中にはシリアスなお話もあるのですが、全体的には
タイトルが象徴するように、春っぽい雰囲気の、ほのぼのとした作品となっています。
四季折々の物売りの声、女湯の姦しい化粧談義、湯屋の二階で馬鹿話に興じる男たち。
江戸の町の息吹も感じさせながら、ほのぼのとした江戸人情を感じて心がほっこり温かくなるような一冊。
おれんの恋にも最後には嬉しい展開が。
次の作品につながりそうなエンディングも、おれんファンには嬉しい限りです。