青空娘 [DVD]
ストーリーだけで観たらアホらしくなるような、善人悪人のきっぱり別れた人物描写と嘘くさいプロット。アイドル映画との評もあったけど、まさしく粗悪なアイドル映画にありがちな内容だ。「シンデレラ」の継子いじめや「赤毛のアン」「家なき子」の孤児状態、「母を訪ねて」の母恋いなどを模した東京バージョンで、主人公はいじめられてもいじめられても、ありえないほどどこまでも清く可憐でまっすぐで屈託のない娘。でもなぜかなぜか、20代の若尾文子の健康的でまぶしい美しさが作品に説得力を与え、すがすがしい仕上がりになっている。やはり美というものは何者をも肯定させる威力というものがある。
チョイ役で田宮二郎が出ていたり、引き回し役がミヤコ蝶々のお手伝いさん役だったり。そのまた合いの手が弟子で夫(だった)魚屋役の南都雄二だったりと主要脇役以外にも見どころはたっぷり。50年代の銀座・青山・東中野・東京駅の風景も見逃せないし、「日東工業(ヒロインの相手役の会社)」や「(甘い物は)みはし」というセリフ、やたらと出てくるチェリオかファンタ風の身体に悪そうなアメリカ風のビンジュースなど、当時流行していて現代風の演出の一環なのかどうか不明だが、いわゆるタイアップだったのでは?
日本が一生懸命アメリカのリッチぶりを模倣していたようすが、映像から手に取るようにわかるのも一興。娘たち、特にヒロインのファッションは「ローマの休日」のヘップバーン風で白いブラウスにひるがえるギャザースカートがカワイイ。義母にあたる沢村貞子が着てる奥様ファッションもかなりいけてる(ときどきシュミーズ見えてるけど)。キッチンにはホーロー鍋とジューサーミキサー。音楽にふける異母兄、予告で「カリプソ娘(って何だ? 不良娘は当時カリプソ聞いてたのか?)」と紹介される異母姉など、当時の風俗もかなり楽しめる。
最高殊勲夫人 [DVD]
これは良かった。昔の邦画のイメージも増村監督のイメージも覆す、軽妙なラブコメディですね。小津がカラーの時代に若手監督だったらこんな映画を撮るんじゃないかと思った。
ジャケットの写真は表示されてませんが、川口&若尾のおどけた記念写真が使われてて、洒落てます。
社長道中記 [DVD]
日本映画史に燦然と輝く社長シリーズのなかで、何が最高傑作かといふのはそれぞれ個人の見解があるでしょう。しかし、ですね私が思う最高傑作は本作品の正編、後編はワケデス。スピンオフのなかではでは『サラリーマン忠臣蔵:前編、後編ですね。盆と正月にはこの二作品を観る事をお勧めします。二作品ともに運命を握っているのは草笛光子。