ようこそ"と言える日本へ" 弁護士として外国人とともに歩む
現在までの土井香苗さんの活動に関して知っているわけではないのですが、私自身が行政書士であることから、仕事がら外国人の滞在に関する問題には興味があり、いわゆる外国人問題についてインターネットで調べているときにこの弁護士の名前を知り、この本が出されたことを知りました。
日本が難民受け入れに対しとても消極的であることや、UNHCR他の国際社会からの批判も受けながら難民を強制送還していることについては、新聞やテレビで断片的に知ることはありましたが、この本を読んで、裁判過程と何度にも渡る入管の収容を知り、難民の置かれた立場や悲痛さが伝わってきました。
この他にも、難民ではありませんが日本に短期ビザで来てそのまま日本に不法滞在し、子どもも生まれた家族の話もあります。それに続いて外国人排斥の空気とともに、今の日本では反政府的な思想や活動に対しても押さえ込もうとする風潮が出てきているという一般の日本人も含めた人権・自由を侵害する社会についても警鐘を鳴らし、一例としてイラクで拘束された高遠さんたち3名に対する日本のメディア・政治家の反応と、あの事件前後の弁護団の活動についても触れています。
難民問題などに焦点を絞って問題点を抉り出すというのではなく、土井さんが弁護士になる前のアフリカでの司法ボランティア活動から現在までの活動の報告のような本です。彼女の名前を聞いて「どんな人なんだろう?」と思われた方にぴったりといえると思います。
行政書士として外国人の在留問題に関わるときには法律の枠内で入管をどう説得するかという観点での仕事になるため、当然ではありますが、やはり弁護士というのは考え方が違うものだよなぁ~と感じさせられる所が多々ありました。
巻き込む力
人権派弁護士として目覚しい活躍をしている土井さんが、やや自伝気味に自身の子供時代から
現在までを語っています。第1章自己形成期 第2章転換期 第3章充実期 第4章飛躍期 の4つに分けて
中学受験から司法試験、そしてアメリカの弁護士資格取得までが興味深く描かれています。
そして、現在の人権を守る活動が紹介されています。生きる勇気のわいてくる良書だと思います。
大学生などが読むのに、とくに適しているのではないでしょうか。
人権で世界を変える30の方法
1.内容
世界中で起きている人権侵害を報告しつつ、人権の歴史、行動を起こした人たち、国際刑事裁判所などの人権侵害を止める仕組み、行動のヒントを書いた本。世界人権宣言全文や、本、ならびにホームページの情報もある。
2.評価
人権の国際化が言われているが、世界中で起きている人権侵害、それが日本人とどう関係あるのかが示されているので、われわれ日本人(レビューを書いた私が日本人にすぎないが)が世界中の人権侵害について考えるのに適当な本だと考える。疑問に思ったのは、死刑廃止についての記述がないことと(国際人権規約の一部に死刑廃止条約があるのに)フェアトレードについてだが(『30の方法』シリーズにはなぜか言及されている)、疑問よりも人権について考えるというメリットを評価して、星1つ減らさず、星5つとする。