マーラー:交響曲第9番ニ長調 (Mahler : Symphony no.9 / Leonard Bernstein, The Israel Philharmonic Orchestra) [Live recording 1985] [2CD] [輸入盤]
正直に言って、この度の音源のCD化には非常に期待していました。発売が待ちきれないくらいでした。バーンスタインファン、マーラーファン、クラシックファンというにとどまらず、人類の遺産とも言うべき価値のあるものと思っていました。
しかしいざこのCDを手にして聴いてみると、最初の音から「あれ、おかしいな・・・」と感じました。聴き進めば聴き進むほどその違和感は増していきました。表向きの華やかさはあるのですが、演奏が空回りしているように思いました。「内容」が伝わってこないのです。マーラーがこの曲に託した想いがまるで伝わってこないのです。ほぼ同時期に録音されたコンセルトヘボウとの演奏は、バーンスタイン本人も納得したようですが、私も納得しました。(しかしながら私にはワルターとコロンビアとの演奏の方がはるかに強く訴えかけてくるものがあり、マーラーの死の恐れ、生への憧憬や執着がひしひしと伝わってきて、心から感動を覚えました。)しかしここで聴かれる演奏は、失礼を承知で言えば、音が鳴っているだけとしか言えません。察するに、あまりリハーサルもせずに録音してしまったのではないだろうか。コンセルトヘボウとの録音からあまり日数が経っていないことを考えても、今までCD化されなかったことを考えても、そうとしか思えません。そんなに素晴らしい録音ならバーンスタイン本人がもっと早いリリースを切望したに違いありません。私は第1楽章を聴いて、それ以上聴く気になれませんでした。
このあとの日本公演が壮絶を極める名演だったと聞くと、本当に残念でなりません。
一応、歴史的な価値を鑑みて星3つです。
イスラエル (岩波新書)
政治史を中心に新書版一冊にまとめた、1948年の建国以前から建国60年を過ぎた現在にいたるイスラエル現代史。
イスラエルにかんする本は無数に出版されているが、本書における著者の最大の功績は、イスラエル社会の現在の実態に即し、従来から日本でも知られている枠組みである、アシュケナジーム(=中東欧系ユダヤ人)とスファルディーム(=1492年のスペイン追放後、地中海沿岸地方に離散したユダヤ人)の違いよりも、アシュケナジームとミズラヒーム(=中東イスラーム世界出身のユダヤ人)の違いという視点からイスラエルを考察していることであろう。
ミズラヒームは、モロッコ、イラク、トルコ、イエメンなどから、イスラエル建国後移民してきたユダヤ教徒である。彼らは、シオニズムという世俗国家の理念とも西欧流のライフスタイルとも関係なく、現在にいたるまでイスラエル社会の下層としての生活を余儀なくされてきた存在だ。
本書は、一言でいってしまえば、ミズラヒームとパレスチナ人を含めたアラブ系イスラエル人という視点からみたイスラエル史である。
イスラエル現代史とは、主流派であったアシュケナジーム中心の世俗国家から、多文化社会への変容によって、きわめて宗教色の濃い国家に変貌させてきた歴史である。
これは、『見えざるユダヤ人』(平凡社、1998)で、ミズラヒームの存在を日本語でははじめて読める形として読者に提示した著者ならではの特色である。移民国家で、多文化社会であるイスラエルは、どのカテゴリーに焦点をあてるかで、まったく異なる像が描かれることになるからだ。
イスラエル建国の中心となった、アシュケナジーム系のシオニストが主流派であった労働党が凋落し、ミズラヒームに加え、エチオピアやソ連崩壊後のロシア系移民も含めた出身地と、宗教的姿勢から複雑にカテゴライズされている現在のイスラエル社会は、著者がいうように、多文化主義性格をもつがゆえに、その反動として逆説的にナショナリズム的な行動をとらざるをえない傾向が強まっている。そうでないと国民がバラバラになってしまうという懸念につきまとわれているためだ。
イスラエルという国家のアイデンティティはいったい何なのか。周囲を外敵に囲まれているという意識から、安全保障以外に国民の共通利害がないのか。
また、還暦をすぎたイスラエルという国家は、今後どういう方向に進もうとしているのか。
多様性と、ユダヤ性強化というナショナリズムとのあいだに存在するジレンマに引き裂かれる状況、これはイスラエルだけでなく、中国も含め、戦後独立した新国家にみな共通する難題であろう。
本書は、一冊の新書本に情報を詰め込んでいるので、ちょっと読みにくいのは否定できないが、じっくり腰をすえて読めば、必ずや得るところは大きいはずだ。読む価値のある労作である。
1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.323 イスラエル軍戦車 M51 スーパーシャーマン 35323
古くは、バーリンデン製「アイ・シャーマン」のレジンキットを購入したものですが、やっとタミヤから出ましたか。IDF『センチュリオン“Sho't Kal”』、いわゆる「ベングリオン」も出して欲しいものですね。
マーラー:交響曲第3&10番
第1楽章冒頭は、ややテンポが速く迫力に欠けるかもしれない。
聴きどころは、最終楽章。聖書を読み終えた後の敬虔な心を映しているかのよう。
メータは、ある部分を意図的に強調したりテンポを変えることなく、ごく自然にマーラーを表現している。
第3番においてはむしろそれが曲想において当然であるかのように。
イスラエルフィルは、マーラー(ユダヤ教徒であった)の演奏においてはまさに水を得た魚か。メータもやりやすかったに違いない。
無理をしていない、まさに自然で伸びやかですがすがしいマーラーが聴けた。
オーディオ的には、大変満足できるレベル。クリアーで奥行き感があり、陰影が濃い。