ディレクターズ・カット
個人的には『センシュアル・ワールド』、『レッド・シューズ』の両アルバムを嫌っていました。というのも、音の作りが刺々していたのと、曲に魅力を感じなかったためです。
さて今回、再録音をされた曲を聴きなおして私はすっかり魅了されました。まあ、人によっては『声に以前のような力を感じられないため、曲が衰えて聴こえる』だの、『何年も待たされて再録かよ』みたいな意見もありますが、『Aerial』の雰囲気、ケイトの歴史を重ねた声の温かみに満足した人には好盤です(ただ、自分も1曲目の低い囁き声には最初悪い意味でびっくりしました)。
このアルバムを買うのも躊躇されている方が多いと思われますが、それは発売形態、国内か輸入盤かの問題でしょう。
国内盤の利点としては、雑誌Strange Daysの岩本さんによる非常に詳細なケイトのデビューから今に至るまでの歴史解説、メンバー情報と山下えりかさんの新たな翻訳でしょう。翻訳は他の方が以前にやったものよりもこなれていて良いです。『UK公式プレス・リリース訳』は2ページくらいの特にありがたみのない情報なので、ファンサイトを調べた方が良いと思います。
あと、3枚組みになったものは『センシュアル・ワールド』、『レッド・シューズ』をデジタル加工する前のマスターテープからの音源をリマスターしたものだそうです。ケイト曰くエッジィな音が嫌いだったとか。こちらのタイプは買っていないので評価できませんが、アルバムを持っていない方にはお勧めかも。
とどのつまり、ケイトの詳細な歴史について興味もなく、大体のことは音楽雑誌や今までのアルバムのブックレットで知ってますって方は、マスターテープからの音源をリマスターした2枚がついた輸入盤を買うのが良いと思います。俺もそっち買えばよかった。
追記:このアルバムは大分癖になります。久しぶりにニック・ドレイクのアルバム並みに繰り返し聞きました。そして、『センシュアル・ワールド』は本当に良いアルバムだなあと、ようやっと理解しました(その次のは好きじゃないけど)。
雪のための50の言葉
7月発売の「DIRECTOR'S CUT」は6thアルバム「センシュアル・ワールド」と7th「レッド・シューズ」から選曲されたセルフ・カバー集で、9枚目のニューアルバムと言っていい程の見事な仕上がりで、まだ自分の中で消化しきれていないうちにこの10th「雪のための50の言葉」がリリース。
発売日の今日購入して繰り返し聴きましたが、こんな短期間にケイト・ブッシュの新作を立て続けに聴けた事は今迄ないし、嬉しい悲鳴状態というか、予想通りの深遠な世界です。何度も繰り返し聴いてどんどん味が出てきそうなアルバムと言えるでしょう。
今回冬がコンセプトになってるので、簡単に例えると2008年のエンヤのアルバム「雪と氷の旋律」のケイト・ブッシュ版ですね。ただ今回の新作はソロピアノがかなり全面に出ていて、そのピアノの一音一音が重く響き、ケイトのボーカルもかなり真に迫ってきます。
(1)曲目「SNOWFLAKE」でケイトの息子が美声を披露し、(5)曲目「SNOW IN AT WEELER STREET」でエルトン・ジョンがゲスト・ボーカルとして参加。ここで思い起こすのが、ピーター・ガブリエルのアルバム「SO」にケイトが加わった事。今作は7曲でトータル65分。曲によっては10分以上に及び、曲の流れもゆったりしていて、奥が深いし、ある意味「SO」に匹敵する内容と言えると思います。今もステレオから流して聴きながら書いていますが、既に今年の自己NO.1アルバム候補になりそうです。
ライナーにも書かれていますが、ケイト・ブッシュは過去30年のイギリスの音楽界の女性アーティストでは名実ともにもっとも評価されている存在です。自分も彼女のアルバムは全て所持してますし、一度も手放す気にはなりませんでした。
一番好きなアルバムは3rd「魔物語」ですが、今回の新作は一つ前の「DERECTOR'S CUT」も含め自分の中ではかなり「魔物語」と拮抗しています。何十年にも亘ってこれだけ聴き応えのある音楽を供給してくれる”ケイト・ブッシュ”の存在は得難いです。
50 Words for Snow
KBのアルバムを購入するのはHounds of love以来です。1985年でしたっけ?
アートワークの印象そのままにモノクロームな墨絵的世界が展開され、淡々と演奏が続く中、
囁くようなミニマルなボーカルが内に秘めた情熱を感じさせる所が気に入りました。
アルバムテーマに沿った形でクールで抑制の効いた曲で構成されているので緩急はほとんど感じませんが
ケイトのボーカルとピアノはかなり抑え気味ながらツボを押さえたというか、
良い意味でケイトのユニークさを際立たせていると思います(特にMisty,13分越えの大作です)。
そして何よりピアノの音色がすばらしいと感じました。
今回は自身以外のヴォーカルをフィーチャーした曲が多い(Snowflake (Lead Vocal: Albert McIntosh,ケイトの息子さんですね),
Lake Tahoe (Stephan Roberts & Michael Wood), Wild Man (Andy Fairweather Low), Snowed in at Wheeler street (Elton John))のも特徴ですね。
また今回はパートナーのギタリスト、Dan McIntoshとスティーブ・ガッドが全面参加しています。
クリスマスアルバムとはいえませんが、これから迎える冬に家のオーディオでちゃんと音を出してじっくり聞きたいアルバムだと思います。
全曲視聴は以下リンクで可能です。
http://ro69.jp/feat/katebush201111
music of the millennium
☆オムニバスCDというのも本当にたくさんの種類が氾濫するようにもなりましたが、「ベスト・アヴ・オムニバス」は、これでしょう。タイトル通り20世紀を代表するアーティストの名曲が揃えられています。2枚組で、レーベルを飛び越え39アーティスト、クイーン、ジョン・レノン、ジョージ・マイケル、スティーヴィー・ワンダー、アバ、サイモン&ガーファンクル、プリンス、ビョーク、カルチャー・クラブ、デュラン・デュラン、U2、ローリング・ストーンズ……。これは、一家に一枚あっていいものでしょう。
MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2011年 12月号 [雑誌]
Perfume特集目的で購入。
内容紹介を読んで、前回同様に分かってる人の特集になるかなと期待して購入。
『JPN』全曲ガイド、ライヴDVD全6作品を紹介、特集とは別のアルバム・ピックアップは読みごたえのある内容。
書き手自らの意志を持って、作品と向き合ってるのが伝わってきて、これだけでも買ってよかったと思えた。
しかし、インタビューとPerfume論が微妙すぎる。
インタビュアーは、決まりきった設問をこなしてるだけで、たまに自分の好きな話題にだけ飛びつく。
そんなことなら、3人がテーマに沿って自由に語ってる方が、実りある話が聞けたように思える。
Perfume論も同様に、一方的な視点でのみ語られ、ここ最近のPerfumeとその周辺での現象を俯瞰できていないようだ。
いつもながらの読者じゃないので、参考にならない部分もあると思いますが、特集への過度な期待はお勧めしません。