八百長―相撲協会一刀両断
この本は相撲という虚実入り混じった世界の特に「闇」の部分を深く著しています。
事実、八百長のような事も皆無では無かったのでしょう。
しかし、この本にも書かれているように、「真剣勝負で半分勝てなくなった力士は集中攻撃を受けて引退に追い込まれる」というような非常に厳しい「プロ」の世界であることも事実です。
この本をお読みになった方は是非とも「光」の部分について描かれている本もお読みになってください。
日本怪死人列伝 (扶桑社文庫)
これはすごい本です。さすがにきびしいシノギを経てきた安部さんだけあって、ぬるま湯の中でくさいものにフタをしてきた凡人が避けて通ってきた鬼ばかりの世間の本当の姿に独特の書体で肉薄しています。それは日本が闇から闇へと追いやっていた戦後日本の裏社会の実像を白日の下に照らし出すことにほかありません。
とにかく読んで損はありません。安部さんにはもっともっとこのような作品を期待します。
八百長―相撲協会一刀両断
まず読んで最初に思ったのは、著者は自らの寿命がそう長くはないと覚って書いたのではということ。でなければ、大鵬以下、千代の富士、北の湖などの名横綱をあそこまで書けないだろう。実際平成5年に脳梗塞で倒れ糖尿病と心臓病に悩まされ、生活一切を武蔵川(三重ノ海)親方に預けて、地方の病院で闘病生活を送っていると告白している。しかし、本の中で証言している、元北の富士後援会副会長の橋本氏も重度の糖尿病であったらしいが、亡くなる2週間前に鹿砦社代表の松岡氏がゴルフ帰りの二人とちゃんこ料理屋で会っているので、それなりに元気だったと思われる。
著者がまえがきで最初に述べているが、NHKや相撲担当記者が相撲界の「八百長」の実態を知っているはずなのに、全く無視して真剣に勝ったの負けたのと論じているのは如何なものかと、問題提起したのが本書の出版の経緯である。結局今回の八百長発覚も、元は野球賭博に関わるメールのやりとりを捜査している段階で見つかったわけで、この本の出版以来15年、日本相撲協会に全く自浄作用はなかった。
内容は下ネタも多く、決して高尚な内容ではないが、全てが真実かどうかはともかく、少なくとも女と金まみれの世界であったことは確かだろう。大相撲がそういうものだと思いたくない人もいるだろうが、全くのウソと退けることができなくなったことだけは事実である。