シューベルト:ピアノ五重奏曲
シューベルトの叙情的な調べには、従来から、どこか閉じ籠った一時凌ぎの安楽のような匂いを感じてはきたが、最近アファナシエフの「地獄に堕ちたシューベルト」という一文を読んで、見方が完全に変わってしまった。多分に文学チックなアファナシエフの文飾には警戒しつつも、この影響力は絶大だ。シューベルトは最も怖ろしい音楽を書いたのである。
そうなると、長年聴いているシューベルトの『鱒』や『死と乙女』といったウィーンの哀傷も俄かにその相貌を変えてくる。これまで見なかったもの、感じなかったものが感じられてくる。『鱒』のご機嫌愉快な心地よさは、第2楽章アンダンテのどこか不安げな進行に引き寄せられる。有名な第4楽章のテーマと変奏は仮初の、あるいは不安や恐怖の上っ面に過ぎない。
途中、短調の安逸を引き裂くような侵入には耳を覆いたくなる。そのあとのピアニッシモの変奏の虚ろなこと。これを叙情なんてことは誰も言えまい。フィナーレの軽快さは、冷え冷えとしたものを蔵した皮相な愉悦だ。
『死と乙女』は最早実存的な地獄である。第2楽章アンダンテ・コン・モトは、こう言ってはなんだが聴くにたえない気がする。ハーゲン・カルテットのノン・ヴィブラートによるボウイングがそれを弥増す。怖ろしい。
そうなると過去の名盤がかすんでくる。あの幸福なシューベルトの音楽に浸る歓びは、最早帰ってくることはない。物凄く不安だ。いったいどうなるのだろう・・・。いろいろなこと思わるる。
第6実験室
中学3年生の時、テレビでカリガリの存在を知り、買った一枚。コンポに入れて再生ボタンを押し、扉を開いた瞬間に私はカリガリの虜になりました。新メンバーになってからの初のオリジナルアルバムなのかな?正当派ビジュアル系好きの友人からは「ゲテモノ好き」との称号を欲しいままにした私の音楽観を変えてしまった一枚。今でも他人に勧めたりしては賛否両論をいただいています。パッケージや歌詞カードにもデザイン性があり、地下室系が好きなら必ず良いと思える素晴らしいアルバムです。