中春こまわり君 2 (ビッグコミックススペシャル)
「光る風」のパロディーに大笑い.
自縛した深刻さを笑い飛ばす山上節は健在.
虚像とアフリカ象(巨象)を掛けるオヤジギャグに乾杯.
しかし、どれだけの読者がネタを判ってくれるのだろうか?
主婦の生活完全版
第1話の『昌代さんのおろし金』。主婦の必需品、「おろし金」。しかし、その刃先は、ガラスの破片のように、必要以上に鋭利なものであった。手に傷を負った主婦昌代はそこに制作者の『悪意』を感じ取る。なぜ、そのような恐ろしい卸し金を作ったのか、その動機は?そこで調査に乗り出すことにする。その他、『白蟻御殿』も面白い。新築祝いに来た客人にカップ麺を出すシーンでは思わず、腹を抱えて笑ってしまった。漫画でした表現できないミステリアスな世界を、天才山上たつひこが縦横に描く。しかも随所に、彼ならではのギャグ散りばめるられている。読者は本書の世界に浸り、きっと至福のひとときを堪能するであろう。
赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ・スペシャル・エディション
テープの音源がなかったのか、ソノシートからのリマスタリングのようで、プチプチノイズが少し入っています。
でも、これが聴けるなので、すごすぎ!
井上陽水の「桜三月散歩道」が聴きたかったのだけど、他の曲も、すごくいいです。
光る風
私がこの作品に最初に出合ったのは、朝日ソノラマから発行された上下二巻本でした。
私の驚きは、あの有名なギャグマンガ『がきデカ』の作者がこんなにシリアスな作品を書いていたという事実と同時に、当時学生運動が挫折して社会が右傾化をはじめた中で、やがては戦中戦後よりも過酷な全体主義に移行する危険性をリアルに予感させる作品だったことです。
朝日ソノラマ版は友人のあいだを貸し回している間に紛失し、いずれ古書店で見つけたら買っておこうと思っているうちに、その古書は高騰してずっと買いそびれていました。
それが、連載当時の完全版として発行され、飛びつくように購入して改めて読むと、内容の一つ一つがシチュエーションは異なるものの、あまりにも現代の状勢に接近していることに愕然としました。
『光る風』に書かれた差別、格差、軍隊のあり方など、ことごとく今の日本は当てはまりつつあります。
山上たつひこは、『光る風』のなかで日本が全体主義に移行する現象の一つとして、防衛庁が「国防省」に昇格することを指摘しています。名称は「防衛省」と異なりますが、かつての防衛庁は「省」に昇格し、そのトップは「長官」から「大臣」になりました。
さらにここ数年、大地震などの災害が予測されていますが、『光る風』の中の為政者は、大災害までも全体主義確立のために利用していきます。
何十年も前に初めて読んだとき、エンディングに敗北主義を感じて気になっていたのですが、2008年の現在改めて読むと、このエンディングに続く日本の将来をどう描くのかは、読者である我々の選択にかかっていると、問題を投げかけているように感じられました。
差別や格差はなぜ作られるのか、なぜ、防衛庁は防衛省になったのか、これらはすべて「自分には無関係」なことではなく、実は誰にとっても大変身近なことです。
『蟹工船』を読む若者たちなら必ずそれを理解できるはず。ひとりでも多くの人に読んでほしい作品です。
出版社に一言言わせてもらえれば、定価が高すぎる。せめて2000円以内にならなかったものでしょうか。