Throbbing Gristle's Greatest Hits
オリジナルは、何故かラフ・トレードからの発売でした。日本盤も出ました。当時、TGと競うようにキャバレ・ボルテールがノイズ・ミュージック、ニュー・ウェイブの先鋭だったのですが、そのキャブスも「レッド・メッカ」あたりからコケはじめ、ラフ・トレードも一時の勢いを無くしていました。このTGも同じく「20〜」をピークとして、下降線をたどっていたのは、隠しようもない状態。大体ベスト盤なんて発売するなんてロックじゃない!なんて思っていたのを憶えています。
さて、このベスト盤、1980年発売ということで、代名詞的アルバムであり、このベスト盤が出たころ一番世間を騒がしていた名盤「20〜」の曲が大半を占めています。セカンドからは2、3曲、ファーストからはゼロ(ただし、セカンドの曲であり、今回のこのシリーズでファーストのボーナスCDに入っている曲が1曲選ばれています。ややこしい。とりあえず、まあ、こういった感じの選曲です)。
今回のこのエクスパンデッドシリーズでは、リマスターの本編とともにボーナスCDがついており、そのボーナスCDにオリジナル盤発売当時のライブや、シングル曲が収録されているので、オリジナル盤全部を集めれば、少なくともこのベスト盤の本編はあまり重要ではない感じになりました。が、そこはただでは済まさないTG、このベスト盤にもボーナスCDをつけています。こちらがかなり貴重。アナログ盤でしか出していなかったもの、これまで全く未発表だったもの、ヒーゼン・アースからの曲のリミックスなどなど付けて売る気満々です。大阪浪速の商人もびっくりするくらいの商魂です。
そう、TGってアート集団、ポストパンクなどと言われて音楽的にも、アルバムのジャケなんかも譲るところなしという感じなので、かなりストイックな人たちのように思えるけど、結構、人間臭いところがあるんですよね。大体がバンド名が「ビンビンの男根」だし、解散理由はヌードモデルもあった女性メンバーの奪い合いという下世話なものですしね(でも、一応解散時には「任務終了」と書いた手紙を関係者に送ったらしいが)。
さて、これで、一応オリジナルTGは、終わりですが、非常に良いリマスター、かゆいところに手が届くような素晴らしいボーナスCD付きのこのシリーズ、どのアルバムでもOKですが、未だTGを未体験ならこのベスト盤なぞはいかがでしょうか。曲の配置とか「単なるベスト盤」では済まないものです。ベテランの人もこの素晴らしく音が澄んだリマスター、そして、ボーナスCDがある限りは買いでしかないでしょうね。
それにしてもTGっていいバンドだなあとホントに思います。
Throbbing Gristle Bring You...20 Jazz Funk Greats
TGと言えばまずこのアルバムということになるでしょう。誤解を恐れずに言えば、それだけこのアルバムは、ここまでのノイズ、実験音楽、インダストリアル・ミュージックでありながら聴き易いアルバムになっている。「聴き易い」といっても彼らのアルバムの中ではということですが。そういうこともあって非常に有名なアルバム。
このアルバム、これまでのファースト、セカンドとは大いに趣が違う。一曲一曲が「曲」らしいものになっている。同じようなノイズの雨あられではなく、それぞれの曲によって曲想がすごく違う。リズムマシーンが強烈な非常にアグレッシブ曲あり、何だかシンセの音色が静かに流れるだけのような曲ありである。なので、アルバムとして聴くとバラエティに富んだものになっている。と、同時にトータルな印象を与える。そうして、これまでと同じように実験的な態度は微塵も変わらない。歌詞も初めて掲載。TGのピークであり、ロックの名盤の一枚である。この一枚が無ければ、今の音楽シーンは相当違ったものになっているはず。
ファーストは「アート集団です。こんな音楽もやってます」みたいなアルバム。セカンドは「音楽は私たちの活動の重要な一部分です。これを聴いてください」みたいなアルバム。そうして、このアルバムは「私たちは音楽を中心として活動しているアート集団です。これを聴いてください。いやでも聴かせますよ」みたいなアルバム。TGといってもいろんな印象を与えるアルバムを発表していることに今回のシリーズであらためて認識した次第。
曲想から考えて、ファーストが、ジェネシス・P・オリッジ中心としたバンドなら、ここではおそらく他のメンバーも同じくらい発言力を持っている状態になっていると思われる。で、そうなると、バンドの運命は、お決まりのとおり。TGのスタジオアルバムは、これが最後。解散を迎える。ぎりぎりの人間関係だったんだろうなあとも思う。ちなみに彼らの解散のきっかけはヌード・モデルもやってた女性メンバーの奪い合いによるもの。ストイックな印象を与えるTGだけど、まあ、人間だったんですね。下世話な話ですけどフラれたのは、ジェネシス・P・オリッジです。
アルバムジャケは、自殺の名所で彼らメンバーだけが微笑んでいるモノが表、裏のジャケでは、彼らの前に死体みたいなのが転がっている。ちょっと悪趣味に過ぎるけど、前作と同じくキリスト的ヨーロッパへの彼らなりのNO、「背信」ということでしょう。アルバムタイトルも資本主義社会をからかっているようなもの。もう、滅茶苦茶。
このシリーズ、この盤もリマスターは最高。非常に音が澄んでいます。ボーナスCDのライブは本当にぶっ飛びものです。かっこいい!
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55曲のインダストリアル、ゴスのコンピ。2枚組。
PSYCHIC TV,PIGFACE,THROBBING GRISTLE,ノイバウンテン、
などインダストリアル、DIE KRUPPS,FRONTLINE ASSEMBLYなどボディ系の時代錯誤なクリップがダサカッコイイ。とにかく長い。
低価格なのでジャケなどは安っぽいです。
D.O.A. The Third And Final Report Of Throbbing Gristle
TGのセカンドアルバムにして、彼らの最高傑作とする人も多いアルバム。
前作とはハッキリ違う音を出している。よりアグレッシブな攻撃的なサウンドである。前作がアート集団のBGMみたいなものとするなら、今作はハッキリと聴いてください主張している音楽である。リズムマシーンの多様で聴きやすくなっているところもある。それと同時に、よりバラエティに富んだ音作りもなされていたりする。前作ではジェネシス・P・オリッジを中心としてバンドが一つになった音作りであったが、今作のこのバラエティさは、各メンバーの意見も強く出てきている結果と思われる。かといってバラバラでなく、未だかろうじて統一感を維持しているところは、このアルバムをして最高傑作と推す人が多い理由でもあるだろう。
さらに、彼らの主張は、アルバムジャケにも出ている。前作は真っ白なものであったが(あれも秀逸)、今回は、幼女というか少女の写真。なんだか機械がたくさん置いてある部屋にポツンと一人の女の子が座っている。そして、何とも言えない表情でこちらを見ている。ジャケの右下にはスカートの裾をまくられ、ベッドに横たわる女の子の写真もある。今回のこの盤付属のブックレットではこの女の子の上半身裸の写真もある。つまり性犯罪だ。「背信」「不貞」などの言葉が連想される。彼ら流のキリスト教ヨーロッパ社会へのNOであろう。若干悪趣味な気もしない訳ではないが。
このシリーズ、前作と同じくリマスターもOK。ボートラCDは78年のライブ。これも、かなり攻撃的。
なんだか、今回こそ解散とする話も出ているとのこと。聴いたことが無い人も、旧盤を持っている人もこの機会にご購入をお勧めします。