影
ジャケット、美人に撮れています。(当然ですけど)
「影」、「interference」、「あのひとこのひと」の3曲が入っています。
「影」はTVドラマ「白夜行」の主題歌で、作詞をコウが自ら担当しています。うねるようなメロディーに、コウのボーカルは相変わらず透明感抜群。ただ耳に残るフレーズがないというか、シングルとしてはちょっと歌詞が複雑かなと思いました。
ボサノヴァに挑戦した「interference」、必殺のバラード「あのひとこのひと」はクオリテリーが高いと思います。
特に「interference」は名曲です。歌謡曲的な匂いは程よくスパイスされて、新しいコウの魅力が発見できます。毎日聴いています。
白夜行
東野圭吾さんの作品を読んだのは、江戸川乱歩賞を受賞した「放課後」という作品につづき、2作品目です。
現在TBSで放映中の『白夜行』というドラマに影響され読みました。
多くのドラマが、原作をたたき台にしつつも、原作とは違う物語の展開になることが多いように、『白夜行』の場合も、細かい点で原作とドラマとの違いが見受けられました。
ドラマの場合、はじめから主人公である亮司と雪穂との関係性がはっきりと描かれていますが、原作ではある程度話が中盤にさしかかかってこないと2人の接点がほとんどわかりません。
ドラマでは、ゆがんだ愛情ながらも、雪穂と亮司、そして2人をとりまく人たちとの心の葛藤や苦悩が描かれていますが、原作では、亮司と雪穂の心情(本心)を、本人の口から語らせることなく、周囲の人たちが推理していくという手法を使っているため、彼らが何を考え自滅かとも思える行動にいたるのか、推察するのが難しい。その推察するのが難しい点が、かえって本格的なミステリーとしての本作品の真骨頂なのかもしれません。
様々なトリックや伏線、「偶然」と「必然」が織り成す人間関係を堪能できるのは、原作が秀でていると思いますし、罪意識がありつつも、ゆがんだ愛を貫く、哀しくもせつない亮司と雪穂の愛情表現を堪能するのには、映像美とあわせ、ドラマが優れているように思いました。
もしドラマをご覧になっていらっしゃらないかたは、原作を読んだ後にドラマを見ると、また違った角度から楽しめるのではないかと思います。
白夜行 完全版 DVD-BOX
どの役者も熱演し、原作を読んでいなくても、この作品に溢れてくるものが分かる。
途中で俳優のスキャンダルも出てきたものの、それを見事に払拭して良作だった。
全編通して人間の様々な顔が見えて、『人間』をパターン化していない。
刑事を殺そうとした人間がその刑事に追われ続けていたことに対して涙し、
刑事を救う……なんていう筋書きは『一人の人間』そのものだと思うし
主人公の願いと矛盾を表していて、とても面白かった。
最後まで愛した人のために尽くしつくした男と、共に歩きたかっただけの女。
「自首」という妥協ではなく、最後まで自己を貫き通した姿勢に感服。
その結果として女の方が生きた屍になったとしても、最後のシーンで救われた。
見る価値は在ると思う。
幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))
主人公2人の心理描写が一切なかった白夜行から一変し、雅也の心理描写を中心に描かれている物語。
白夜行での2人のやりとりやトリックを彷彿させるような描写、それから、雅也が普通の人間であるがゆえの苦悩が最大の見所だ。
雅也は震災の混乱の中で叔父を撲殺してしまったが、亮司のように犯罪者の資質をもたないごく普通の青年。
よって、美冬の言いなりになりながらも、心の中で疑問を持ち葛藤し、孤独に悩ませられる。
殺人の後は魚や肉が食べられなくなったり、日々の仕事に汗を流し、一杯のビールで疲れを癒す生活こそが自分にとって最大の幸せな生活だと考えるのは、ごく普通の人間の感覚だろう。
冒頭で子供にパンを譲ってあげたり、美冬を性犯罪から守ったりと、彼の心の優しさはいたるところから感じられた。
その彼が、美冬に利用されるだけ利用され、魂を殺されていく姿はとても痛々しい。しかし、それがこの物語のストーリーなのだ。