高校教師 DVD-BOX
藤木さんはドラマ中に使用された数式をきちんと理解した上で実際に書いたりする演技をしたそうです。
脚本や演出家がどれだけ望んでも表現者である役者の役作りへの真摯な取り組みがなければ、キャラクターの深みは増さないのかもしれません。
死と向かい合った数学教師。数式を解くことにより現実逃避する姿がよりリアルに表現されています。
高校教師 (青春文庫)
2003年にTBSで放映されたドラマ「高校教師」の単行本。10年前の作品のとき私は大学1年であったが、塾講師をしていたバイト先の中学生も話題にするほどの衝撃的な作品だったという記憶がある。設定は前回の作品と全く異なっているが、研究や恋人を失っていくという点は共通している。脳腫瘍で余命半年と宣告された教師(藤木直人)が行った悲しい実験の日々。死に直面した人間にしか想像しえない行為なのかもしれない。悲しい実験と引き換えに手に入れたエゴイスティックともいえる束の間の安らぎ。しかし何となくその心境は理解できるような気がする。「考えるな。考えても意味がないんだ、と自分に言い聞かせる。歪んだ顔で冷静さを取り戻そうと、郁巳は喘いだ」(118頁)、「頭の中を、数式と数学的な思考で埋め尽くしてしまいたいと、と思った」(161頁)、「数学はいいですよ。迷いながらも答えは一つしかない」(348頁)という印象的な文章。自分を次第に蝕んでゆく手の施しようのない病魔から少しでも逃避するために、透明なアクリル板に気が狂ったように数式を書き殴ってゆく姿が何度もドラマのなかには登場する。高度な数学的知識を必要とする教師役を熱演した藤木直人のひとつひとつのセリフを思い出しながら本書を読み進めることになったために(むろん途中からではあるが)、単なる気分転換のつもりがその過程でいろいろなことを考えさせられた。その思考は今後も続くことになるのかもしれない。
高校教師 VOL.1 [VHS]
女子高―どちらを見ても女子だけしかいない潔癖で美しい学園。当然の如く行われる同性愛。人目憚る禁断の愛。
大人びた、ミステリアスで傷感的、見にくい白い煙のようなものを纏う少女。
冬山の眈火のような温かさを持つ彼女の体温に抱かれて夢を見たいと思う。繭に閉ざされた瞳は冷たく穏やかで、本当の心が掴めない。どこから見ても少女。自分のことは自分が一番よくわかってる―少女もまた、わかりきっていない。
彼女は蝶として飛びたてるのだろうか。
教師もまた、自分の恋愛で悩む。愛した人が生物の教師ってところが、少し笑わせる。でもどんな環境でも育ってしまったものに文句を言わないのが現実。あれだけかっこいい教師がいたら、というより成長期のまっただなかにある女子高で選択の余地もないだろうけど。
同情と、迷いと、慰めあい、未成熟な恋愛。砂塔のように脆くて、互いを一番理解する堅い絆。一緒にいなければ不安、二人でいれば何も怖くない。
恐れていた悪夢が現実となる、眉の下から音をたてて毛むくじゃらの羽虫が出てきた。声にならない悲鳴。
平穏な生活のなかに含まれる、穏やかな牙。其処に白い物が居る…。静かで凶暴な、美しい作風が好きだった。
淡々と述べられる呟きに、苦しさも、悲しさも、飽和され、深められて…。癒されることのない苦しみ。
放映当時は普通にあると思っていた。今にしたら、教え子と寝る教師なんて共学の私にしたらなんて恵まれた羨ましい環境の奴だろうという感想を抱いた。真っ白な制服に憧れた。