ナッシュビル [DVD]
御存知、ロバート・アルトマンの多彩なフィルモグラフィーの中でも最も重要な作品が、遂にと言うかようやくと言うか、いきなりの初DVD化にして嬉しいサプライズとして廉価版にて登場。
今まで折に触れ、拙レビュー上でDVD化を祈念し叫ばせて貰っていただけに、これはめでたいと思う一方、何か狐につままれたみたい(笑)。
紛れもなく70年代のアメリカ映画を代表する傑作にも拘らず、今年“70年代アメリカン・ニューシネマ特集”と題して、テレンス・マリックの「天国の日々」と共に一部の劇場でリバイバル上映されたものの、今までヴィデオ化すらされず、多くの方々にとっては伝説の映画だと思えるので、これを機に是非御覧下さい。以上。
〜と結んでしまいたいくらい、この映画、その魅力を語るのが中々に難しい(笑)。
如何にもアメリカ的なC&Wの聖地ナッシュビルに一旗揚げようと集まってくる者たちの5日間に、狂信的大統領候補の予備選キャンペーンを絡ませながら、ウォーターゲート事件後の政治的緊張感と70年代アメリカ社会をも照射したテーマを、ロング・ショットと多重サウンド、更に、俳優たちにアドリブを多用させながらのネオ・ドキュメントな演出を駆使させたアルトマン的群集劇のスタイルが頂点に達した傑作。
短く纏めるとこんな感じなんですが、我ながら手だれた説明ですね(笑)。
先行されているゴッドキングエンペラー氏も、その的確なレビューで述べられていますが、24人もの主要登場人物が入り乱れての人間ドラマを具体的に追っていくと実に面白いのですが、これをレビュー上で反映させるとなると、確かに枚挙のいとまもない。
今作を初見したのは高校生、初のアルトマン体験だったのですが、正直16歳にはその面白さが今ひとつ分かりませんでした。複雑な人間関係が十分把握出来なかった事もありますが、アルトマン自身のヴィジョンたる“これが、75年のシンボリックなアメリカだ!”的メッセージが、アメリカ人でもなく、アメリカで生活した事もない者にとっては、深遠で理解するのが難しかったからです。
ただ、映画の持つユニークさと斬新さには、強烈な印象を受けました。
その後、名画座で再見し、物語の流れと登場人物の個々の動きを“点”ではなく、“線”で捉えられるようになり、そして、“アメリカ”への関心が高まる毎に、今作の持つ凄みと面白さが分かってきたよう思えます。
シニカルにしてユーモラス、悲しいけどエネルギッシュなその風刺精神にハマってしまったんですね。
登場人物たちの人間模様が、幾重にも交錯し、あのラスト・シーンへと繋がっていく。
2時間40分、そのドラマ性は極力抒情性を排しながらも、“I’m Easy”を歌うキース・キャラダインをただ見つめるリリー・トムリンとか、服を脱がされる事を知らずに、男性向けの大統領候補選挙資金パーティに駆り出され、結局ストリップを強要されるグエン・ウエルズとか、実に切ないんです。
騒然となったラストで主役交代とばかりに憑かれたように熱唱するバーバラ・ハリス。彼女の歌う“It Don't Worry Me”は、キース・キャラダインが、もともと自身が出演した「北国の帝王」の為に書いた楽曲ですが、その歌詞は、今作のラストを飾るに相応しい如何にもアルトマン的アイロニーを感じさせます。
今作では、20曲以上ものオリジナルな楽曲が使われていますが、曲を作ったり、歌ったりしているのは、みな、出演者自身。カレン・ブラックでさえ、中々の美声を披露しています。
これだけの個性派、クセモノがスタッフ、キャストに名を連ねている今作ですから、当然逸話の類は多いのは当たり前で、例えば、リリー・トムリンの役柄は、最初はルイーズ・フレッチャーにキャステイングされていたとの事です。トムリンには、同時期に別の映画のオファーがあったそうですが、結局、運命の皮肉か、ふたりはそれぞれに振られた役を取り替えて出演し、トムリンは、今作でアカデミー助演女優賞にノミネートされました。代わりに、フレッチャーが演じる事になったのは、「カッコ―の巣の上で」であのラチェット婦長。彼女は同作で、見事アカデミーの主演女優賞に輝きましたが、双方が当初のままの役柄でそれぞれの映画に出ていたら、なんて考えるのも、映画ファンの秘かな愉しみではないでしょうか。
映画の撮影時、世間ではウォーターゲート事件に端を発したホワイトハウスの疑惑で噴出しており、ベトナム反戦運動に関わっていたスタッフ、キャストが多かったその現場では、その話題で持ち切りだったようで、ニクソンの大統領辞任のニュースが報じられた時には、大歓声が挙がったとの逸話も懐かしいですが、後に、ジョン・レノンの暗殺事件が起こった際、この映画との関連性に聞かれ、責任を感じないか、と問いただされた時、アルトマンは、一笑にふし、自分の警告に何故誰も耳を傾けなかったのか、と反論したそうです。暗殺と言うのは、政治的背景などよりも単に有名人であるから狙われる、との持論を展開したんですね。
いたずらロバート
長く、入手困難で、著作リストの中での気になる作品でした.著者の長編に慣れた人には、あっさりとした中篇というところです、短いながらもこの作品にちりばめられたエピソードには、ジョーンズらしさがあふれていて、他の作品と同じような出来事が起こったり...読みやすいので、入門篇としてもいいかも。
愛の歌~ブラームス合唱曲集
ちょっとしたレベルの合唱団なら、どこかでお目にかかったり、演奏したりする曲。
なので、合唱に興味のある人なら持っておいて損のない曲集。
モンティヴェルディ合唱団の演奏は各パートの声が必ずしもそろっているとはいい
がたいが、愛の歌ワルツにはこの様な行き方の方が良い。そもそもまじめな曲の多
いブラームスの中で、愛の歌は純粋に遊べる曲がそろっており、楽しく演奏してま
す!というところが伝わらないと、価値はないでしょう。なので、コンクールのよ
うな場所で神経質かつ禁欲的に音をそろえて歌うというのは全くだめ。とはいえ、
この演奏が割と楽しめるのは、ワルツのタイム感も、絶妙だからでしょう。
他の曲も作品92はあまり聴く機会がないのでおすすめ。中でも2番目の曲がブラ
ームス的憂愁の世界を色濃く出しておりますが、モンティヴェルディ合唱団の演奏
はテンポが速すぎ(その方が楽に歌えるので)て、翳りが少ないのが減点。
104番はブラームスの合唱曲の中でも、最も深い内容の曲で、単純に技量勝負だ
けでは表現できない曲で、合唱団の表現力をつけるにはおすすめの曲。
モンティヴェルディ合唱団の演奏は全体にテンポを遅めにとっており、憂鬱度は高
い演奏。3番目の曲は、3年前の全日本合唱コンクールの課題曲になりましたが、
ちゃんとこの曲を指導できた指導者はいたのでしょうか(音合わせで終わったんじ
ゃないの)。5曲目の「秋に」はブラームス芸術の白眉であり、曲の充実ぶりはド
イツレクイエムと比較しても決して勝るとも劣らない名曲であります。
とはいえ、当方の印象では、これを買って聴くより歌え!というのが偽らざる感想。
バックドラフト [DVD]
難しい炎の表現を実写と合成で巧みに表現されている
しかし、内容と比べてそれはあくまでもおまけ程度と考えても良い
なぜならこのテーマは、仲間の絆なのですから。
消防士という危険を分かち合う仲間の絆と
仲が悪そうで、実はいつも心配しあう兄弟の絆が
とてもわかりやすく表されている。
一人っ子の多い今、兄弟を知らない人には迷わずお勧めします!
ロバート・クラフト・コレクション シェーンベルク:作品集 第6集
このロバート・クラフトのシェーンベルクシリーズはkoch社時代からの私の愛聴盤でした。皆に知ってもらいたいと思いつつもマニアックなレーベルなので知られずに歯ぎしりしてたところ・・・。指揮者のクラフトはストラヴィンスキーとの交友が有名ですが、私の知る限り、シェーンベルクの方に名演がはるかに多い。この人の演奏はブーレーズやシェーンベルクらにも認められていたお墨付き。とにかく音のとり方がきれい!楽式の把握も完璧で、とにかく僕の知る最高のシェーンベルクの名演です。ぜひどうぞ^^