公安部門は捜査もするが、それ以上に情報
調査、防諜の比重が大きく、「情報機関」と見られている。秘匿性の高い公安部門が何をしているか、部署ごとに簡潔にまとめたのが本書。公安の行動を通して、日本の国家組織にダメージを加えようと画策する国、組織の動向も紹介する。「公安○課」とされるのが国内のテロ組織への捜査を、「外事○課」が、国内にいる外国諜報機関員の摘発、を目的にそれぞれ水面下で徹底した
調査をしている。中でも
ロシアスパイの動向はスパイ小説のようだ。他人になりすまし、スパイが路上にものを置き去りにして本国の情報員にそれを拾ってもらう……など。それに対し公安部は、在日大使館員の3分の2に及ぶと言われる情報機関員に公然と追尾したり、情報機関員が接触した人間全員を調べるなど、現実にこんなことをやっているのかと興味深く読んだ。
著者自身の在籍していたのは5年以上前なので、本書で扱っている事件は四半世紀前など、かなり古いものもある。また、文末で「公安のやり過ぎを防ぐためにも公安を知るべきである」」という程には、公安部の失態はほとんど出てこない。しかし、公安事件は起こってからでは遅い。事前に押さえ込まなければならない。また、スパイハント、テロ組織摘発の手法の基本は大きく変わることはない。尾行や組織外との人間関係、組織に誰が所属しているか、組織内にスパイを作れるか……非合法活動以外はほぼ網羅されているので、公安が何を目的として何をしているのか大概はつかむことができる。