千年後の未来、人類は物質文明を失いローテクな生活を余儀なくされています。反面その生活はエコロジーで倫理的なある種の理想郷の姿ともいえる世界です。現在のわれわれと違う点は彼らが「呪力」と呼ばれるサイコキネシスを有して、自己保存のためそれを厳格に管理しなければならないことでした。子供たちは徹底的な思想教育を施され、小規模の共同体と外部の境界には『八丁標(はっちょうじめ)』と呼ばれる結界がはられ原則出入りはできません。結界の外ではこの千年に突然変異で現れたと思われる奇怪な生物がうようよしています。
このようなシチュエーションで呪力を学ぶ少年少女が失われた千年の謎に導かれて結界を越えます。そこでの少年少女の冒険を縦糸に、千年間で人類に何が起きたのかが横糸として謎が解き明かされていきます。上巻では世界観や登場人物の紹介で占められるので少し読むのが辛いですが、それ以降一気に物語が動き始めます。
結末は読んでのお楽しみですが、たっぷり文庫本3冊の分量に相応しい、世界観、ストーリー、アクション、あっと驚く謎解きと十分楽しめる作品だと思います。私的には重厚な世界観、結末の意外性など最新作
悪の教典 上より優れた作品だと思いました。
個人的には本で読んだ登場人物とキャラクターのイメージ違い過ぎ・展開早過ぎ・ISOLAだって、もてない過酷な人生送って来て勉学のみに命を捧げ、挙句好きな男性にも裏切られ、最後まで悲惨な運命の女性が怨霊となったからこそ凄みがあるってのに、映画では普通にきれいな女性がやってるし、少女が多重人格に至るまでの苦しい経緯も説明不足・これじゃ雰囲気さえ出るわけない。ただ、ユカリの職業がどうたらとか肝心で無いところを省いたのは良い感じ。最後の不気味な落ちが無かったのは「あれ?」だったが、別物として見ればなかなかさわやかで良かった。後、ホラーの部類に入るのなら、全く怖くない。テレビドラマみたいでした。