紅型の衣装の表紙が全体の空気を決定しているように感じられる。冒頭からいきなり90年前の首里の町にいる自分に気づきびっくりするが、話はその後もゆっくりと、但し90年のトリップを何度か繰り返しながら進む。戦争の時、
イタリアのように非武装宣言をなぜこの文化の島に出せなかったのか、戦争マシン国家日本が恨めしい。それにしても主人公たる鎌倉芳太郎のたどった道は信じがたいほどに正解で、常に国家からうまく距離をとった結果が写真とノート(重要文化財)の秘密の保存の成功で、それが琉球文化の再生を用意した、という物語を生んだ。それが全く感動的なので、読み終えたあともこの本からまだ離れたくない気がする。多少とも琉球ないし沖縄に興味がある向きには強く推薦。