おもしろい本。ブラックジャックは、特にカードが残り少なくなったときには、それまでの札の出具合に応じてプレーヤーに確率が有利になる場合があることを指摘してその機会の検出と利用法をルール化、アメリカのギャンブル業界を震え上がらせた一冊。
が、邦訳は現在の状況を書いていないので不親切。
ラスベガス(ネバダ州)では、本書にあるカードカウンティング自体が違法。また気に入らない客は理由なしに放り出せるので、カウンティングをしていると思われたらすぐにピットボスから出て行けと言われる。これに対抗するためにチーム式のカードカウンティングが編み出され(詳細はメズリック『ラス・ヴェガスをブッつぶせ』参照)たが、バレるとかなり不愉快な目にあうとのこと。そしてプレーのルールも変わり、シングルデックのテーブルもほとんどなくなり、さらにナチュラルの
ボーナス得点が減らされたために、長期的には胴元側がかなり有利となってしまっているので、昔のようなうまみはまったくないとのこと。
また本書のルールは結構複雑で、きちんと実行するのはなかなか困難。出版当初は、これで儲けようとしてカジノにきたものの途中でまちがえたり、しばらく負けが続くと本書のルールを守る気をなくしてしまう付け焼き刃の素人がたくさんやってきて、みんなかえって損をしていたとのこと。本書は、確率をもとにした厳密な運用という点では非常におもしろいし歴史的意義もあるが、いまこれを持って
ラスベガスに行こうとしている人は、考え直したほうがよろしいですぞ。
ジョニー・デップ主演の最高傑作にして、ベニチオ・デル・トロがやっとその演技力の程を見せてくれた作品(だと私は思う)。原作者のハンター・S・トンプソンが直々にジョニーに映画化権を認めただけあって、ジョニーの演技は素との区別がつかないほどすごい。ジョニーは、実在の人物を演じる時は演じる人物に四六時中密着してその人を観察するそうで、今回はハンターの家の地下室に住んだとか。とにかく、ジョニーファンはもちろんの事、ベニチオファン、テリー監督ファンなら見なければならない義務がある!!(と思うよ)
ここまでやるかぐらいに、とにかくハチャメチャ。一度見てこの映画がいわんとしていることを理解できる人は、よほど理解力のある人かこの原作を読んだ人であろう。
ドラッグ三昧で取材のため車を走らせる男達、ジョニーデップがジャーナリスト、彼とともにドラッグを詰め込んだ車で、
ラスベガスに取材に出かける
弁護士役がベ二チオ・デルトロ。ジョニーは原作者のハンター・トンプソンになりきるため頭をそり(それも頭のてっぺん部分をはげにしている)、ベニチオはおなか周りにたっぷり肉がつくくらいに太って役作り。ジョニ-のハンターになりきった歩き方や話し方も見ものだが、ベニチオのコメディアンの素質にはびっくり。二人ともかなり化けられる俳優である。
そういった意味で、繰り返し見て楽しめる作品。