この方の料理を食べたら、きっと日本料理の素晴らしさも改めて知る事が出来るし山本シェフだからこそ見出せた日本料理に含まれるまだ見ぬ可能性にもきっと出会える。と思います。
他のレビュアーも書かれていますが、本書の紹介文や帯のコピーはミシュラン三つ星のお店の紹介文のようです。実際には店主である奥田氏がどれほど苦労して今の成功を手にしたか、その波瀾万丈の物語です。根底に流れるのは自分を支えてくれる人々への感謝の念と、自分を信じて努力する姿であり、苦難を乗り越えながら一つずつ登りつめていく姿は読む側も力が入ってしまいます。
自分の不器用さを否定せず、足りない物は休日や睡眠時間を削ってでも勉強し修行する、本人はさらっと書いていますが並外れた情熱や目標がないと出来ないことです。そして何より「自分や自分の料理はまだまだ発展途上」と言う謙虚さが彼を支えているように思います。もちろん確固たる自信もあり、裏付けとなる技術も持っているからこそ三つ星と認められている訳ですが、生きるか死ぬかを経験したからこそ語れる言葉で正直に自分の長所も弱点も語る姿に不遜なところは感じません。素晴らしい一冊でした。
ミシュラン3星の「かんだ」の店主の日本料理の献立に沿った材料・調理法へのこだわりをつづったエッセイです。
和食ではなく日本料理、高級ではなく一流というこだわりがある一方で、肉料理やワインも積極的に取り入れているのは、筆者が
フランスで修業をしていたことによるところが大きいのだと思います。この洋食との対比、またその良いところは取り入れる姿勢がミシュランをして3年連続3星の偉業につながっているのかもしれません。高級な店で足を運ぶことがない世界と思いきや、家庭での料理に生かせる技を要所で披露してくれており、週末早速キッチンに籠ろうかという気にもさせられます。