本書で注目すべきは筆者が死を予感した阪神淡路大震災の経験から東日本大震災に触れてる 後半の部分です。地震、津波は天災かもしれない、しかし原発事故は断じて人災であると力 説してることです。かつて筆者が「11PM」というTV番組の司会で作家の広瀬隆に原発 の危険性について語ってもらったとき、当時のデイレクターの指示がスタジオに飛んだ。 「広瀬の顔を写すな」「原発の話題を打ち切れ」、逆に筆者が「事実をいって何が悪い」と 一喝し番組を最後まで続けたことがあったことが書かれてます。 福島の原発事故は広島の原爆の20倍を超える放射性物質をまき散らしたといわれてます。 筆者がいうように「想定外の出来事」という言葉は本当に許されない。
「11PM」での印象が強く、作家藤本義一が上方の芸人についてこれほどの名作を書いていたことを知るのが遅かった、と反省しきりである。
『鬼の詩』はもちろん傑作だが、川島雄三監督の『貸間あり』で、監督と一緒に脚本を書いていた当時の記録とも言える『生きいそぎの記』も結構だし、漫才の師匠の影武者役を務めた男を主人公にした『贋芸人抄』も、寄席の下座や夫婦漫才の相方役を経て、劇的な最後をとげる一人の女性の人生を描いた『下座地獄』も印象的だ。また、1988年に下北で開催された「川島雄三映画祭」での講演記録も貴重である。
要するに、収録された全作品が短編とはいえ充実した内容だったし、作者の洞察力と表現力に感心した。
亡くなってから、『鬼の詩』を自宅近所の古書店で探してみたのだが見つからず、近いうちに神保町を探索するつもりでいたら、新刊書店で文庫で見つけることができたのは僥倖。
作家藤本義一との出会いは遅かったが、嬉しい出会いであった。河出さんは、ぜひ他の藤本作品も復活させて欲しい。そういう期待も込めて星五つ!
川島雄三監督作品というと幕末太陽伝くらいしか容易に手に入れることが出来ず、ケーブルテレビの番組表とにらめっこしてはチェックしていた。とりわけこの作品は原作者の井伏鱒二が気に入っていなかったためテレビ放送をすることが出来なかったいわくの作品なので、こうしてDVDで見ることが出来るのは非常に嬉しい。
内容といえば一つのアパートの奇妙な住人達が織り成すドタバタコメディーなのだが、そこには意思をもちながらも日常に流されていく日本人の姿が主人公を通して描かれている。また、本作に登場する「サヨナラだけが人生だ」は川島監督を代表する有名なセリフなのでファン待望のDVD化でもあると思う。
今では白髪になってしまった藤本義一が若い頃に師匠である川島雄三とアパートの設計図から作り上げていった作品、心して堪能したい。
端唄を習って三年くらいですが、根岸 禮先生の歌の魅力には感動いたします。 これからも、日本の伝統の端唄のCDをもっと出してください。
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