目新しくはないが、擦り切れた
恐竜の話ではなく、バイプレーヤーたちの生活が興味深く面白かった。
空を飛びたかっただけの幸吉。そこに野心なんてなかった。あったのは少年のような真っすぐな夢だけ。ただ、その姿は人々には浪漫としてではなく世直しを叫ぶ鵺という希望に映った。幕府の悪政を正すべく奔走する魅力ある男達の知性ある勇気と、期せずして伝説の男となった幸吉の真っすぐな気持ちがミックスされて時代を切り開いていく男達の物語。幼き頃と老年の幸吉に影響を与えた女性おキヌとウタは荒野に咲く小さな花のように物語を和らげている。微細にわたる時代描写、繊細な人物描写、五感に訴える自然描写。類い稀なる読後感。一級品の大衆文学。