不思議な映画である。終戦の詔勅がどのような経過で発せられたのかをアメリカ占領軍が検証するという内容だが、どうしてこんなことに
ハリウッドが興味を持ったのかが不思議だった。映画自体は、玉音放送を巡る一連の国内の動きをドキュメンタリー
タッチにダイナミックに描いた傑作「日本の一番長い日」のような迫力は全くない。製作者はきっと、マッカーサーと天皇の会見で、全ての戦争責任は自分にあり、国民には罪はないと天皇陛下が述べられたことに感動した(のだろう多分)マッカーサーが、天皇の戦争責任追及を自分の政治的野心に利用しようとしていたのを悔いたというエピソードを映像にしたかったのだろう。ただ、戦前に愛し合った日本女性を主人公が荒廃した日本で探すというベタなお話が並行してダラダラと進行し、肝心なGHQによる戦争責任の一連の動きがひどくぼやけたファンタジーになってしまっている。依然として
ハリウッド映画に登場する日本が中国なのか
ベトナムなのか判別不能な中で、このような日本にとっては重要だが、アメリカにとってはどうでもいいような内容をまじめに作品にしようとしたことを評価したい。
プロダクションの規模としては何となくB級サスペンスっぽい印象を見る前は抱かせてしまうが、これが見始めるとグイグイ引き込まれ緊張感が最後までとういうか最後の最後で最高潮に達するという見事なストーリーと構成で魅せる傑作アクションサスペンスとなっている。複数人の視点から一つの事件をパズル的に見せていくというアイデア自体は昔からあるが(キューブリックの現金に体を張れ!とか・・・)それを見事に活かしきったという意味で素晴らしい脚本と言えよう。この構成だと一つのパートが終わる度に観客に新たな知識と謎が提示されるのでまさに最後まで目が離せなくなる。
主演は世間的には人気があるような雰囲気が全くないが、80年代の青春ハンサムスター出身としてはトムクルーズと彼だけ!でおなじみのデニスクエイド。この人は本当に何故か分からないが気づいたら第一線で一応活躍しているな・・・。
後、この見事な脚本だけに焦点が当たってしまって見過ごしがちなのですが、シガニーウィーバーにウィリアムハートにフォレストウィティカーと
アカデミー賞受賞俳優が3人も出演しているのですよ・・・・。ただシガニーウィーバーは彼女でなくても別にかまわないようなストーリー的にも全く重要でない役。一番の儲け役は何と言っても単なる観光客として事件に遭遇することになるフォレストウィティカー。事件の中心人物でも何でもないのにラストの感動は殆どこの人のうま過ぎる演技力によるところが大きいでしょう。