中学生の頃、兄の弾き語りで博堂と出会いました。 当時よく聞いていた曲目をたよりに、どのベスト盤が良いか選択し、これを注文しました。 「センチメンタルな私小説」「春は横顔」「娘をよろしく」など ライブに収録されていることを確認しました。 このライブ音源はまさに貴重ではありますが、解説に言及されているように、 「CD化を迷いに迷う音質」であります。 コアな博堂ファンには貴重ではありますが、博堂ワールドの入り口に立つ人には 適当ではないように思います。 よって、自分はもう一枚ベスト盤の購入を考えています。
きっかけは他の歌手のビデオクリップを見ていた時でした。 関連する歌手の紹介として、大塚博堂の名前を目にしました。 まだ20代の頃、当時FM放送からカセットに録音した懐かしい 名前でした。久しぶりに耳にしたその声は、とても新鮮さを感じ るものでした。もっと聞きたくなり、早速このアルバムを購入し ました。大塚博堂の声は、やさしく、切なく、そして深みのある 素晴らしいものでした。特に「過ぎ去りし想いでは」「哀しみ通 せんぼ」「季節の中に埋もれて」など毎日通勤時に聞いています。 また、このあと購入した「メモリアルベスト+ラストライブ」も 期待を裏切らないものでした。次の機会に紹介したいと思います。
大塚博堂の歌に出会って数年。彼の歌の魅力は聞けば納得。歌に魅力を感じたらこの本を読んでみるといい。彼の歌の魅力の源が少し見える。
YouTubeで、博堂さんの歌を初めて聴いて、このCDを買ってみました。感性、発声と音程がしっかりしているのでメロディに乗せた情緒表現が揺らがずに伝わってきます。写真のお顔と甘くて優しい艶のある声の落差が大きくて壷に嵌った気がします。故小林秀雄さんがモーツアルトの交響曲40番を、透明な哀しみが駆け抜けていくようだ、と云う様なことを書いておられたと記憶にあるのですが、博堂さんの曲の基調にもそれに似た、いわば悲しい事柄を抽象してしまって、存在の哀しさ、愛おしさだけが残ってしまった、ような透明感があります。きっと約束された才能の成就を見届けることが出来なかった心残りが、聞くものの胸を打つ、ということもあるのかも知れません。その反面、彼の内省的なしっとりした歌の多くが過去の思い出の方角に向かっています。触れば指の痕が残るのではないかと思われるほど、柔らかで傷つきやすい若い日の心を、私たちは封をして大人になりますが、その心を彼はそっと優しく薄紙をめくるように思い出させてくれます。そんな博堂さんに、どういう年輪の重ね方が可能だったのか、と想像してしまいます。4年程前にガーファンクルのコンサートに行って酷く失望したのを憶えています。少なくとも博堂さんはそんな姿を私達に見せることはなかった、という事を以って瞑したいと思います。
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