エリック・ロメール監督の<喜劇と格言劇シリーズ>第3作。ノルマンディーの海辺に避暑に訪れた15歳の少女ポーリーヌと、
パリで働いている美人キャリアウーマン・マリオン。そこで、マリオンの男友達ピエールとその知り合いで学者と思しきインテリ男アンリと偶然出会う。キャンデイーを売る娘と地元青年シルヴァンが絡んで繰り広げられるちょっとした恋愛ドタバタ劇なのだが、初心なポーリーヌの目を通じて描かれる大人たちの振る舞いは言ってることとやってることが矛盾だらけ。その一夏の間に純真なポーリーヌが、愚かな大人たちから恋愛について学んだことは・・・・。
一瞬の閃きがすべてと語るマリオンは恋愛スピリッチュアル派。マリオンをめぐって、束縛を極度に嫌う石田○一的恋愛自由主義者アンリと、理想を相手に押しつける恋に不器用なピエールはとても友人同士にみえないほどいがみ合う。アンリの自宅で大人たちの高尚な?恋愛談義に耳を傾けていたおしゃまなポーリーヌであるが、次第にご都合主義的な大人の身勝手な行動に振り回されるようになる。
映画冒頭のテロップで<口は災いの元>というトロワの詩の一部が引用されているが、この映画の主役は登場人物たちによる饒舌な“会話”といっても過言ではない。個人的にはマリオンという美人を手に入れておきながらキャンディー娘にちょっかいを出すちょい悪オヤジの趣向がわからなくもないが、初心なポーリーヌにとっては到底理解不能な汚い大人の世界。「単一の普遍性」などと言葉巧みに解説されるよりは「美人は3日で飽きる」と言ってくれた方がよっぽどわかりやすいのだ。
一見少女の成長を描いているようで、そのじつ言葉多くして自滅する大人たちの(まるで子供のような)ドタバタの方がこの映画のメインディッシュであることはまちがいない。小難しい熟語が沢山出てくるわりには肩の力を抜いてサクッと鑑賞できるのは、少女の目を利用したロメールのシニカルな演出が効いている証拠だろう。