『沖縄 悲遇の作戦 異端の参謀八原博通』(2004・光人社NF文庫)なる怪書(単行本は昭和59年に
新潮社から発刊)がある。
オビにはこうある。
「米軍を驚嘆させた沖縄守備隊第32軍、持久作戦の立案者の生涯。本土防衛のため、守備隊は無為な玉砕はせず、
米軍を足止めする徹底した持久戦を挑んだ作戦主任参謀の戦い」。
この映画の極めて秀逸かつ、監督・岡本喜八×脚本・新藤兼人が試みた野心的な試みは、
そうこの仲代達也演ずる「八原博通」から観た沖縄戦の真相を克明に活写した点にある。
もちろん牛島中将演ずる小林桂樹、長参謀長演ずる・丹波哲郎始め、多くのプロフェッショナル俳優が渾身の演技を焼き付けた。
住民をも「確信犯」として巻き込む「米軍を足止め徹底した持久戦」を立案・実行せざるを得なかった実戦部隊の悲憤と覚悟。
そしてその渦に巻き込まれ、戦闘に巻き込まれていき、そして血の海に斃れていった多くの一般市民。
まさに本作は純粋な戦争スペクタクルとしても、その克明な告発としても、未だに十二分な価値を放つ、日本映画の至宝の一作である。
作品末の八原=仲代の悲憤こそ、「沖縄」を捨石にした軍・政府中枢への悲憤かつ慟哭であり、「告発」である。
この映画を鑑賞してこそ、太田海軍少将(及び沖縄県知事・島田叡と言うべき内容だろう)の例の高名な訣別電文が我が身の心を改めて抉る。
「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」