田中希代子~東洋の奇蹟~
田中さんの演奏はとても力強く聞き応えがある。
残念なのは、ベートーベンのオーケストラが若干ピアノ負けしていること。
ヨーロッパのオーケストラのモーツアルトと聴き比べると若干おとって
しまっているのが残念。
結果として、☆3つですが田中さんの演奏を堪能できる
すばらしいCDであることは間違いないと思います
ドビュッシーこどもの領分 全音ピアノライブラリー
ドビュッシーは技術的に難易度の高い数々のピアノ作品を残しているが、これは私たち一般人でも弾いて楽しむことのできる小品集。晩年に近くなってから授かった娘への愛情がこの曲集にちりばめられており、弾いて「ほっ」とできる・笑顔になれる、そんな無邪気な曲集だと思います。個人的に大好きなのは第4曲の「雪が踊っている」。私に理由を聞かずに弾いてみてください。雪が踊っているってこういうことなのかと気づかせてくれるはずです。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフは1965年のライヴ。情熱に溢れた名演奏で輝くような高音と素晴らしいスピード感は圧倒される。
抒情的な部分でもセンチメンタルになりすぎることはなく品位良く音楽の推進力が保たれている。
オケをも引っ張っていく燃焼度の高さは例えばアルゲリッチ&コンドラシンのチャイコフスキーのライヴと双璧かもしれない。
ラヴェルは1959年のライヴ。名盤とされるミケランジェリが57年、フランソワが58年の録音ということを考えると同年代に若い彼女が鋭敏で豊かな感性と素晴らしいテクニックでこのようなラヴェルを弾いていたというのは凄い才能を感じる。
ピアノのパートはとても味わいがあり素敵なのだが、残念なことにオーケストラは音楽とリズムになじめず四苦八苦といった風で思わず時代を感じてしまう。
ドビュッシー・リサイタル
田中希代子さんは60年台に活躍されたピアニストですが、病が若い気鋭のピアニストから表現手段を奪い引退を余儀なくさせました。田中さんは引退後は後進の育成に力を発揮され、96年に64歳でこの世を去られました。田部京子さんとかが愛弟子です。いま、AVEXから売り出し中の菊池洋子さんは最後のお弟子さんだそうです。60〜70年台にN響のコンマスをされた田中千香士さんは弟さんです。
さて、この「子供の領分」は、私にとっては思い出のある盤で、私が中学生の頃である70年台前半に親から買い与えられたものです。私は、この盤をきっかけにしてフランス音楽にのめり込んで行きました。録音はそのさらに10年前の61年。70年には既に田中さんの指は動かなくなっていたとのことです。(当時はLPでした。ちなみに今日、当時のLPを手に入れようとするとヤフオクで10万円くらいします)
演奏は、聴いていると自然に体が動き出すような、生理的に無理のない演奏で、かつワイセンベルグのように点描画を描いていくような正確なリズムが緊張感を作り出し、うまいバランスの上に成り立っています。
なお、日本人の女流で、田中さんの演奏に匹敵する演奏はその後見当たりません。(キキ柏木さんという方の演奏は、次点に推薦できると思いますが・・・)
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第4番&第5番
サン=サーンスの2つのピアノ協奏曲の弾き手と音楽が一体となった美しく感動的な演奏。
第5番「エジプト風」第1楽章のさりげない冒頭から音色に心がこもっていて、星のきらめきを思わせる速いバッセージの鮮やかさと第2主題での哀しみを帯びたニュアンス、第2楽章での標題音楽的なまがいものさは彼女の真摯な音楽性とピアノの音色によって極上の音楽となり、第3楽章トッカータは彼女の名技が最大に発揮された見事な演奏。
第4番でもピアノの高音部の美しさや軽やかなタッチは冴えていて、ライヴならではのいろいろな不備を越えて音楽は常に喜びを持って奏でられ息ずいている。私達はこのような演奏が今でも聴きたいと思うし、ピアニストならこのような演奏をしたいと思うであろう。