戦術眼 (ベースボール・マガジン社新書)
現・北海道日本ハムファイターズ監督で、かつて近鉄バファローズの監督としてリーグ優勝の経験を持つ、ゴールデングラブ賞4度の名捕手が語る野球論。全八章の中身は「日ハムのチーム作りビジョン」「現役・コーチ・監督時代の体験談」「リードのセオリーと攻め方」の三つのパートに大きく分類できる。
興味深いのは名将と言われた西本幸雄、仰木彬両監督の下での体験を語る下り。奇しくも同じ近鉄という球団を、(著者自らを含めて)それぞれ異なる時代に、異なる方法論で優勝へ導いた三者三様の足跡が検証される形となっている。そして鉄拳指導へのアレルギーがあり“愛のムチ”には否定的と本書で明言する著者が、一方では何度も鉄拳を食らった闘将・西本監督への思慕を隠さない辺り、人と人との絆が一筋縄ではいかない面白さを秘めている事を私達に示してくれる。
人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず (双葉新書)
タイトルの「人を育てる名監督の教え」と帯の「小川淳司」という文字に惹かれて
この本を手にした。
小川淳司は東京ヤクルトスワローズの現監督であるが、2010年5月26日、ヤクルトが13勝32敗借金19と
どん底にいたときに監督代行となり、見事チームを立て直し8月には借金ゼロにした人物である。
自分がヤクルトファンということもあるが、マネジメントの視点からも小川監督がどのようにチームを立て直したのか
という点がずっと気になっていた。
組織を構成する個人にはそれぞれ役割がある。組織として最大限のアウトプットを出す(チームを勝利に導く)ために
誰にどのような役割を与えるかを考えることは、非常に重要である。
小川監督も然りだが、名監督は選手がどういう役割を持たせれば、チームが強くなるのかを知っている。
また、どうすれば個々のモチベーションを向上できるかを知っている。
選手を一軍にあげるときには、その選手に期待することを伝え、二軍に落とすときは何が足りないのか、どこを鍛えるべきか
を伝える。それによりモチベーションは向上する。
筆者も述べているが、野球チームのマネジメントは会社や学校等の組織のマネジメントに通じると感じた。
各監督の言葉には、会社での自分の立場に当てはめてみると、仕事に役立てるヒントが
たくさん散りばめられている。
特に野球が好きなビジネスマンにはお勧めの一冊である。
「今日も任せた」・・・梨田監督がダルビッシュがマウンドへ行く前にかける言葉。
高い信頼関係にあるからこそ出てくる言葉であるが、ダルビッシュのモチベーションは最高に上がるのではないか。
梨田昌孝の超野球学―フィールドの指揮官
捕手についての詳細な解説書は、恐らく本書が随一だろう。捕手に関心がある野球ファンや捕手を目指す人は是非ご一読頂きたい。
捕手に関する書籍は数種類あり、「野村ノート」や「フルタの方程式」などは有名だが、内容の濃さは本書が「フルタの方程式」よりも充実している。私の場合は古田の本を先に読み、その後で梨田の本書を読んだが、本書には、古田の本には書かれていないことが非常にたくさん書かれている。
本書も「古田の方程式」も本のサイズと厚みは同じぐらいだが、読み応えは相当違う。比べて見てみたら、1頁の文字数とページ数(紙の厚み)が違うため、本書の情報量(文字数)は「古田の方程式」の2倍以上ある。
本書は、捕手のインサイドワークと配球についてだけでも139ページあり、その部分だけでも古田の本1冊分よりも情報量が多い。初球から2-3まで12種類あるカウント別の配球論が、多数のデータを用いて詳しく具体的に書かれており、大変参考になった。
梨田は、好リードで投手王国・近鉄を支えた名捕手として知られているが、コーチ、2軍監督として指導経験も豊富であり、監督としても近鉄と日本ハムで優勝2回の実績もあるだけに、経験と実績に裏打ちされた本書の解説には説得力がある。
捕手というポジションの詳細な解説書または実践的な「教科書」として、まず第一に本書をお勧めしたい。