ウルトラミラクルラブストーリー [DVD]
誰かが言った恋愛とは醜くみっともない物だと。
その通りだと思う、ただし恋愛の”愛”のみに言えばだ。
恋愛の”恋”の部分に関して言うならば真っすぐで美しい思いを
湛えた濁りの無い物の様な気がするのだ。
横浜聡子監督「ウルトラミラクルラブストーリー」はそんな恋愛における
”恋”の部分、もとい恋にすらなる前の”好き”と言う感情だけを
濃縮抽出した片思いのエスプレッソ。
日本映画史上に残る命がけの一歩通行ラブストーリーなのだ。
とにかく展開についていくのが精一杯、リアルタイムで理解するなんて
まず不可能な観る者をお構いなしに突っ走るストーリーは
進むにつれて全く持って予想だにしない展開を見せて行く。
そんなはちゃめちゃでどこか破綻した恋物語に
タイトル通りの女のコが思う究極の純愛を見た気がしたのだ。
好きかどうかも分からないうちに何となく始まって
好きかどうかも分からないうちに終わる昨今の恋愛事情
恋愛の大前提である「好き」と言う感情を自覚する前に
性欲、独占欲、支配欲、様々な欲にまみれ
いつの間にか片隅に追いやられる「好き」の存在。
もし好きと言う気持ちだけを膨らませる事ができるなら
様々な我欲や嫉妬で汚れてしまう前のピュアで真っすぐな思いだけを純粋培養できるなら
これこそが漫画レベルでしか語られない女のコが永遠に憧れ続ける究極の純愛なのであり
そのための触媒として必要だったのが子供の様に無邪気で無垢な主人公陽人なのだ。
そして陽人の中で膨れ上がった好きのパワーは生命の常識をも覆すようになるのだが・・・
好きな人とずっと一緒にいる為にはどうすればいいのか?
それを突き詰めて行くこうなるのかな。
正解なのかは解らないけれど自分はそう感じた。
一見とんでも映画なこの「ウルトラミラクルラブストーリー」
終わった直後は何が何だかさっぱりなのに後からじわじわ効いて来てもう一度見たくなる。
よくわからんが横浜聡子と言う女がただもんじゃない事だけは確かだ。
ゆりてつ~私立百合ヶ咲女子高鉄道部~ 2 (サンデーGXコミックス)
松山先生恐るべし。
二巻目にして、見事に編集者の注文通りの、今風の萌絵柄を自分のものにしてしまっている。
一巻目ではまだ安定性に欠ける感じだったが、僅か二巻目にして固めてくるとは、凄まじい画力だ。
普通は編集者から、今風の絵柄で爆乳は無しで、なんて指示をされても、なかなか自分がそれまで築いてきた画風を崩す事は、色んな理由から難しいだろうと思う。
しかし松山先生は、本当に絵がうまいから、そういう事が出来てしまうのだろう。勿論、試行錯誤に努力を重ねた結果でもあるだろうが、何より、松山先生自身も前巻の巻末で語っておられるように、長年漫画を書き続けているプロだから注文に答える、という、自分の技術と仕事に対する熱意、プライドの賜物だろう。
そして、今風の萌え絵への変更という戦略は、見事に成功している。
萌え絵だけはうまい漫画家はそれこそ星の数だろうが、松山先生の場合、背景は勿論、何より列車の書き込みが、漫画界随一と言っても過言ではないだろうクオリティを持つ所が他を圧倒しまくっている。
この手の線が細い系な萌え絵の漫画だと、背景やなんかも線が細い、もしくは殆ど真っ白、なパターンが多い感じだが、ゆりてつの場合は、可愛らしい萌えキャラと、写実的な列車の絵という、これまでなかった組み合わせにより、言わば、究極の、美少女とメカのある光景、を作り出す事に成功しているのだ。
この写実的な列車の絵も、一見写真を加工したように見えるが、実はちゃんと書いているというのだから、その仕事量と技術に感嘆する。
物語は、ここも見事に、昨今流行りの萌え漫画やアニメ風な、大した起伏の無いまったりした緩い展開を再現している。日常系というのだったか?
鉄娘な3姉妹も、旅をしている感じは味わえたが、3姉妹はやはり絵柄がどちらかと言うと劇画寄りだったし、キャラクターの個性も強かったので、まったりとした旅行、という感じではなかったかも知れない。しかしゆりてつは、ゆったりまったり列車の旅を楽しむ感じを味わえる。これはやはり絵柄とキャラデザの効果だろう。
列車の旅の気分を味わいつつ、3姉妹同様、鉄道知識の勉強にもなり、更に旅のガイドブック的な使用も出来るという、実に素晴らしい作品だ。
表紙絵に列車が書かれていないので、書店で立ち読み出来ないと、本当にただの萌え漫画に見えてしまう所が弱冠問題かも知れないw
この表紙では、まさか中に写実的な列車の絵が満載だとは想像出来ないだろうから、買い手の幅が狭まりそうだ。
本屋で買いにくいデザインとも言えるしw
僕はどちらかと言えば前作、鉄娘な3姉妹のような絵柄の方が好き、それも一巻くらいの書き込みと激しいトーン使いがある方が好きだから、ある程度したらまた鉄娘な3姉妹の続編も書いてもらいたいと思う。ゆりてつの絵も好きだが、あくまでどちらかと言うとの話だ。
萌え絵に興味は無くても、列車やメカが好きだったり、旅が好きな人ならば、この漫画は確実に楽しめるだろう。萌え絵が好きな人も、じゅうぶんにブヒりつつ、鉄道知識の勉強と、旅気分を味わう事が出来るのでオススメだ。
漫画家、イラストレーターを目指している人にも、鉄娘な3姉妹と併せれば、プロの技を学べる良い教材として活用できるに違いない。