鯨の王
読み終えてみれば、全体のストーリーは長いけれど単純ですが、展開の面白さに引き込まれて読み進めました。
この種の海底ものでは本来見える筈のないものを見えるように書いているケースが多いのですが、センサー技術の範囲内で臨場感溢れる可視化がなされ、少しずつ謎が解き明かされます。
その中で人間と自然との関係についていろいろと考えさせられる物語ですし、最初に散りばめられた謎が最後に一気に氷解するのは快感でした。
偶然は多かったものの、科学的に疑問符のつく記述がなかったこともストレスなく読み進めた一因です(イルカの脳を利用しての操船には無理があるでしょうが)。未知の新種の巨大生物などという到底考えられない設定も、これまで発見されなかった理由も納得できるものでした。
著者の経歴や「謝辞」に記載された人々、そして「あとがき」を読めば、科学的根拠がしっかりしている理由がわかります。
蛇足ながら、「あとがき」は思い切り笑えます。
クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
リアルすぎてなんだか恐ろしく感じた。
物理世界と仮想世界の境界があいまいになった近未来。
物理世界に生まれた人間サヤはアバターを媒介して仮想世界にアクセスし、
仮想世界で生まれた「人間」である人工知能は生身の人間を「ウエットウエア」
として使い、物理世界にアクセスする。
物理世界も仮想世界もともに「現実」である。
はたして、人間と同じ思考プロセスを持つようになった人工知能は「人間」と
言えるのか?
人間とは、いったい何なのか。
そんな事を考えながら読みました。