楼蘭 (新潮文庫)
主に西域を舞台とした短編集。
(後半の数作は本邦が舞台)
井上靖氏の作品には読者に「無常感」を抱かせるものが多いですが、
タイトル作の「楼蘭」はまさにそれが凝縮された佳作と言って良いでしょう。
西域の動乱に翻弄され続け、数奇な運命を辿った末に滅んでゆく楼蘭。
この小説には主人公らしい主人公はおらず「楼蘭」の名が忽然と文献に登場してから、
滅んでゆくまでの風景を淡々と綴っています。
満々の水をたたえていたロブノールは夢のように去り、かつてのオアシス都市楼蘭は、
やがて砂塵にその残骸をさらすのみとなりました。
悠久の時を経て、その砂の中から一体の美しい女性のミイラが発見されたのは20世紀になってのことでした。
井上氏は、彼女を楼蘭の皇女であったと位置づけます。
それを事実とする科学的な証拠は何一つありませんが、井上氏にとって彼女は「運命の無常」を象徴する存在であったに違いありません。
そしてそれは淡い詩情をかきたてるものであったでしょう。
それは、しろばんばにおける「さき子」であり、武田信玄における「由布姫」であり、
氏の作品に数多く登場する象徴的な女性たちの存在と重なります。
楼蘭以外の作品でも、氏は西域を舞台として自由な想像をめぐらせています。
古い説話をモチーフにしたものもあり、また井上氏自身の完全な創作であるものもあります。
多くの民族と歴史が交錯した西域は、まさに氏の作品における絶好の舞台だったのでしょう。
NHKスペシャル 新シルクロード 特別版 第1集 楼蘭 四千年の眠り [DVD]
タクラマカン砂漠に存在していた楼蘭は、西域のオアシスであり、天山南路と西域南道とが分岐する要の場所にあった遺跡です。
有名な楼蘭故城から100キロほど西へ行ったところにある小河墓遺跡の発掘を通して、我々に知られざる四千年前の歴史を見せようとしています。
シルクロードの中で最大の蜃気楼のような謎の王国を調べる過程は興味深いものがありました。
新疆文物考古学研究所による小河墓遺跡の発掘作業を丁寧に撮影しています。舟をふせたような棺の発掘作業は考古学者でなくても興味を覚えるもので、60代の女性が棺から出てきた瞬間は驚きました。完全な防腐処置が施されたミイラの出現です。
その後に、20代と思われる美しいミイラにも驚きました。人類学者はコーカソイド系、いわゆるヨーロッパ系の白人種だと推察しました。中国で一番古い小麦かもしれない種モミも一緒に出てきたので、農業を営んでいた状況が伺え、ユーラシアの西から東への交易移動を知る縁になるようです。
昔、このあたりを最初に発掘した名高いスウェン・ヘディン探検隊の発掘についても紹介があり、その部下のフォルケ・ベリイマンによって1934年に小河墓遺跡が発見されました。その後、2000年12月まで忘れられていたのも不思議です。
このドキュメンタリーを通して、シルクロードが大昔から世界的な交易のルートとして存在していたことを確認できることになり、より深い関心を持ちました。
ACROSS
耳にスッと入ってきてとても優しい、聞いているだけで心が優しくなるような、そんな美しい歌声の持ち主の彼女。オリジナル曲、カバー曲どれもが秀逸で素晴らしい。全てが良いのだけど、特にオススメは、Your Song、Ru-Guo如果、Rydeen雷電。Your Songはオリジナルを含めて色々な人が歌っているけれど、その中でも特に完成度が高いのではないだろうか。心から大切な人に、この中国語バージョンを覚えて歌ってあげたくなった。
これから当分の間は、このアルバムがずっと流れていることになりそう。中国語の歌って、フランス語のようにも聞こえてきてとてもお洒落なのが多いですよね。少しでも多くの人に聞いて貰いたいけれど、特に女性の方に聞いてもらいたい。一つ一つの小さな幸せがたくさん満ち足りて溢れている…そんなアルバムです。