清貧の思想
西行、兼行など日本の古典をひもときながら、清貧とは何か、清貧の生き方の素晴らしさをといている。さらに、アッシジの聖フランシスコからインド哲学まで、著者の守備範囲の広さには、読んでいて驚いた。
すらすら読める徒然草
高校時代、古典の授業は退屈でしたが、最近ちょっとしたきっかけで興味を持つようになりました。私のような入門者にとっては、とても読みやすい本です。抹香臭い随筆とばかり思っていたのですが、中野さんの解説で、とても身近に感じるようになりました。本の大きさもちょうどいいし、なにより原文にルビがふってあるのが、うれしいです。早速、音読に挑戦です!
足るを知る 自足して生きる喜び (朝日文庫)
この度の東日本大震災さらに福島第一原発による放射能災害は、私たち日本人の思考や生活に大きな衝撃を与えたと思う。とりわけ、「原発震災」との関連で、原子力研究の世界に住みながら、原子力に反対し続けてきた放射能測定の専門家、京大原子炉実験所の小出裕章助教は、その著書『隠される原子力・核の真実』を締め括るに当たって、「エネルギー消費の抑制」「エネルギー浪費型の社会を改める」といったパラダイム転換を訴え、「少欲知足(ショウヨクチソク)」の思想を示している。
「少欲知足(欲ヲ少ナクシテ、足ルヲ知ル)」とは、私の謂わば人生訓の一つだ。この「知足」ということについて、文学者の中野孝次さん(1925~2004)は、当著で既に「だが、もしかすると21世紀の地球上の人間にとってこれは最も大事な、生きる上で中心になる徳目かもしれない」と述べている(p.11)。そして、「それはたんに欲望を抑えるというだけでなく、もっと積極的により深い生の充実に達するための知恵だと思う」とも語っている(p.12)。この本は私の座右の書でもある。
“座右の書”といっても、この著書の出版された当時(文庫版は2004年)は流し読みしていた程度であった。だが、年月を重ね、何度か読み返すうちに、砂地に水が染み込むような感覚でしっくりとくるようになってきた著者晩年の作品である。中野さんの豊富な読書経験や人生体験などに裏打ちされた「足るを知る生き方」というものを、私たちの生へストレートに適用することは難しいかもしれない。けれども、私たち日本人は「知足」という哲理を、心底感得してゆく必要があるだろう。
風の良寛 (文春文庫)
かつてバブル崩壊後に「清貧の思想」をベストセラーにした著者による、良寛の入門書。
第一線の知識人でありながら自己主張を行うことなく控え目に生きた良寛だが、当然、彼の人生や思想は謎が多く、この本も著者による解釈や想像が中心である。もしかしたら著者の思い入れが良寛像を清く美しくしすぎている嫌いはあるのかもしれない。ステレオタイプな良寛像を超える新しい見方を得ることはできない本だが、道元やタオイズム、万葉集など良寛が熱中した書物から彼の思想を裏付けようという著者の良寛解釈はそれなりに説得力がある。入門編としては読みやすい一冊だと思う。