薄桜記 (新潮文庫)
丹下左膳をあからさまに意識した、丹下典膳という
剣士が赤穂浪士の討ち入りを背景にして、
活躍する、というより、
一途に生きていく様を描いた、地味ながら心に残る
作品です。
静謐、という感じがします。
どちらかというと、山本周五郎の小説に
近く、五味さんのオールラウンドプレーヤーぶりが
窺えます。
ストイックに、妹の幸せのために、おのれの名誉を
捨てて生き、死んで行く典膳の姿に熱くなります!!
五味さんはあまりセンチな話を書かないので、
この小説は異色とも言えます。
斬りあいや陰謀術策、あるいはもっともらしい人生訓、
だけを時代小説に求めないで、
こういう作品も一度読んでほしい!!
新装版 決闘の辻 藤沢版新剣客伝 (講談社文庫)
歴史に名を残した名剣客の決闘シーンを描いた5篇。
歴史人物が大嫌いなそれがしでもこの著者にかかればついついのめり込んでしまう。宮本武蔵以外は初めて聞く名だが、藤沢周平さんの剣描写に有名無名もない、どの剣客も身近に感じてしまうほど、さすがにうまい。
*お薦め度(★★★★★)
題名が題名だけに手に取りにくいが、読み始めたら実在の人物を知らなくとも一気に行きます。心配ご無用
■「ニ天の窟〔宮本武蔵〕」:
そうか、武蔵も歳をとって弱くなっていたのか? 「五輪書」が読みたくなった。
■「死闘(神子典膳)」:
この決闘シーンは壮絶であった。しかし、その後が面白かった。女は強いなー、魔物だなー
■「夜明けの月影(柳生但馬守宗矩)」:
心技体の描写がすごい、息詰まる。藤沢周平さんほんとうに上手いなー、感心しっぱなし。
■「師弟剣(諸岡一羽斎と弟子たち)」:
なんとも師弟の素晴らしさよ、今の世じゃあり得ないな。
■「飛ぶ猿(愛洲移香斎)」:
こういうのが藤沢周平さんの親しまれるところ、いいなー。しかし、侍もここまできっぱりしていると心地よい。
薄桜記 [DVD]
市川雷蔵が、歌舞伎役者だったんだよな、と染々と思い起こさせる映画。
この映画は白黒でも、白がわりと美しい。
やっぱり雪の場面があるから?(…ありましたよね?)
雷様は、普段そうでもないけど、鬘被ると美しいですよね。
ある殺し屋。カッコいいんだけど、やっぱり鬘欲しいです!
ラストが切ない。 しかし、題名がここでなるほどと意味深くなる。
ドラマ化されるみたいで、まあこの域には達しないだろうけど、また違うアプローチで挑んでいただきたいです。