乱暴と待機(初回限定版) [DVD]
オフビートで、虚無すれすれで、シュールで、ときおりひどく綺麗。
おんぼろ平屋の長屋。さびたトタン屋根。
灰色のジャージ姿のメガネっ子、お下げ髪の真ん中分け「ごくせん」の気配強し。この女が、
ジャージを着て、メガネをかけ、いつもテープを聴いている片足を引きずった男と同居。
そこへ夫婦が越してくる。妻は妊娠していて、夫は無職。夫は律儀にご近所まわり。
メガネっ子が昼間から仏壇に向かって大声で読経。挨拶に立ち寄った男は、
無防備で、そこが妙に性的気配をかもしだす女に興味を持つ。
じつはこのメガネっ子、妊婦妻の同級生で、彼女の恋人を寝取ってしまった過去がある。
それを知った妊婦は、メガネっ子を問い詰め、蹴り飛ばし、メガネは「うひょー」といって一回転。
「ヒャウじゃねぇよ、この豚」と言い捨て、女は去る。
臨月となった女。メガネっ子と夫の決定的な場面を目撃。屋根裏から覗いていたジャージ男、天井板が外れて落下。
妊婦、破水。だだもれの羊水をそのままにして、包丁を持つ。
騒ぎが収まった夜。メガネっ子とジャージ男は、いつものように、2段ベッドの上下に寝ながら会話。
ある意味、ここが山場。ちょっと天上的な美しさを、画面はたたえる。
メガネっ子の心情は、コレットが『青い麦』で主人公ヴァンカに託して述べたものと同じ。
非常に屈折しまくっている映画なのに、見終わって、
『寺内貫太郎一家』とか『時間ですよ』のような、
妙にまっとうなドラマを見たという気になる。
それはこの4人が持っている明らかな"狂い"が、今の日本の標準だから。
僕らはそれらに囲まれ、その中に暮らしている。
見ていて時々、『月光の囁き』と『HUSH!』を思い出した。
エンディングのクレジットロールで流れだす、やくしまるえつこ(相対性理論)の歌。
途上にて
名アルバム。タイトル曲の「途上にて」は少し息苦しくなるほどです。滑稽で猥雑な「大阪慕情」、青春の別離をほろ苦く歌う「さよならをもう一度」等を収録。どちらかというとさっぱりした感じのする曲の多いらんぼうですが、本アルバムでは全体に重い存在感があります。らんぼうファン必聴のアルバムです。
乱暴と待機(通常版) [DVD]
面白かったです。
地味だがブラックユーモアというか、邦画独特の雰囲気とコミカルさが絶妙です。
主役の奈々瀬を演じた美波さんは、某BSで人間昆虫記というドラマの主演もされてました。
それとは似て異なるというか、ある意味真逆のタイプの役柄です。
嫌われることが何よりも怖い→その為ならなんでもやる→その結果、被害者が発生し結局嫌われる。悪循環ですね。
他人なのにお兄ちゃんと呼ばれている浅野忠信は、彼女に復讐をすると公言する。
しかし本当の彼女は自称とても面倒臭い女。
最終的な焦点は、彼女が真に求めているのは何か?ということみたいでした。
小池栄子は強気の女性の役が本当に上手い。
浅野忠信はなんだか昔の彼の演技に戻ったみたいで、これまた良かったです。
日本は変にハリウッド映画の真似なんかせず、
こういうスルメみたいな映画をどんどん作って欲しいですね。