誕生日のできごと (ポプラ文庫ピュアフル)
『誕生日のできごと』です。
著者初の長編小説、ということですが、連作短編形式です。
一人の女性の成長を、その年代ごとのエピソードを連ねる形式で描くといえば、森絵都『永遠の出口』などを思い出しますが、本書には本書の特徴があります。
タイトル通り、18歳から25歳までの誕生日の出来事を描いていること。あとがきに言及があるように「定点観測」によって、主人公の変化、成長を描いています。
各章のサブタイトルとして、その年の誕生日に食べていた物を象徴として入れているのも、作品一つを通じてのテーマとなっています。ハヤシライス、バーニャカウダなどの他にカップ麺までもあります。本文中でも、料理に関する記述は多めで、サブタイトルに出ている以外の食べ物の名前も多数登場します。
それぞれの話ごとに、歌の歌詞が挿入されているのも特徴。ただし作者オリジナルの架空の歌ですが。
編集者と相談して決めたらしい定点観測というアイディアが良かったです。その中で18〜25という年代で直面する、恋愛、進学、就職、車の免許取得などといった問題を上手く盛り込んでいました。そんな中で親しかった友人と疎遠になるとか、姉が予想外の人生を歩んだり、といった部分も印象的でした。
ラストは、ちょっと説教的ではあるけど、読者に委ねる結末により本書の内容を象徴的に表現していたと思います。
全体としてはやはり恋愛の比重が非常に大きいのですが、著者が描くこの年代の女性としてはそんなものでしょうか。
以上が、数ある本の中から本書を選んで読んだ感想です。評価としては★4を選びます。
人のセックスを笑うな
と皆様言っておりますが
逆にそれが良い小説。
感情移入が出来ない
キャラ設定が薄く魅力が無い
などと皆様言っておりますが
感情などどうこうなんて必要ないのです。
愛する人が死んでしまう、ああ悲しいなどの小説ではないのです。
読み手の人生経験で捉え方が変わってしまう。
そんなほっこりする話。
人のセックスを笑うな (河出文庫)
ぎょっとする題名と、人を食ったようなペンネーム。
しかし、内容はふざけたエッセイなどではなく、れっきとした恋愛小説である。
セックスと恋愛と年齢と立場。
すべてがちぐはぐで相容れない場合どうなるのか。
条件で恋愛している人には決して分かるまい。
人に惹かれる事の不条理さと、人の気持ちがわからない事の切なさ、苦しさ。
しかし人は、ほとんどが理由など知らされずに恋人にふられ、
それが分からない故に傷つき、そしてそこから何かを学ぶ。
ぶざまに生きる事の潔さ、心地よさが全編に流れるように横たわる。
カッコわるくたってそれが自分。
みっともなくたってそれが本当の事。
セックスが巧みでなくても、それがどうした。
人のセックスを笑うな。
切ない読後感でいまだに心が揺れる。
Coyote(コヨーテ)No.46 特集 ホンマタカシのたのしいポートレイト写真
coyoteは旅の雑誌だけど、編集の内容は、非常に密度の高い写真論である。尻切れトンボてきに終わってしまうんだけど、言葉としてはわかりやすい。セミプロが読むと楽しいものではないか。同様の特集は多いが、スタジオボイスのマニアックで結局何が言いたいのかわからないものよりは、平滑で読みやすい文章であるのは、ホンマタカシの能力の高さであると思う。残念なことに休刊になったけど、ここまで突きつめた内容を、これからも読んでみたいと思う。