ハンニバル [DVD]
微妙な評価を耳にしていたので失敗作なのかと思っていたら、自分で驚くほど楽しんでしまひました。私は中性的なジョディ・フォスターよりフェミニンなジュリアン・ムーアの方が好きですし、アンソニー・ホプキンスの演技も前作より陰影があるように思います。
フィレンツェのシーンが長すぎる感はあり脚本のバランスがいささかよろしくないです。しかし静的な雰囲気、色彩、音楽と全体として素晴らしくスタイリッシュな映画です。
悪魔か神かというハンニバルと「決して堕落しない」「真っ直ぐな矢のような」女・クラリスの運命の絆の物語なんですね。ハンニバルがその清廉さを認めた女だけは絶対に無事という構図なので、図々しくクラリスに自己投影していれば安心して見ていられます(笑)。
ハンニバルというキャラは何気に江戸末期の無差別殺人鬼・机竜之助(大正時代の人気小説『大菩薩峠』)を思い起こさせます。しかし机竜之助の衝動殺人が善人悪人を問わず、「運命のランダムさ=仏の剣」を象徴していたのに比べると、ハンニバルの殺人には理由があり、この作品に限っては心の堕落した人間だけが殺されるというあたり、一見アモラルでもニヒリスティックな内容ではないんですね。物語の中に理性と勧善懲悪の装置が働いています。
ほとんど相見えることのない男女の間に運命的な絆が存在し、その絆の正体は名状し難く、互いの本質故に永遠に敵同士である、というのは斬新な関係性です。男女関係の話というのはくっついたらつまんなくなるものなのかしれない、などと思ってしまひましたね。両者の緊張関係がロマンチックです。どこか神話的なラブストーリーで、私は堪能しました。
Winners ~アカデミー賞で聴くクラシック (最優秀作品賞)
映画音楽というのは、その音楽と共に映画のワンシーンが思い出されるものです。このCDを聴いていると「あー、イイな~」と目を閉じて、その映画のシーンを思い出します。残念ながら、いくつかの未だ見ていない映画については、あまりピンときませんでした。しかし、さすがはアカデミー賞受賞(ノミネート含む)作品に使われている音楽だけあります!その映画をしらなくても、音楽にかなり惹きこまれます☆☆☆
また、このCD付属の「解説書」はカナリお得モノです。映画評論家の西村雄一郎氏による解説、及びコメント→スゴイですよ!読まなきゃ損!!収録されている曲と映画の解説を読むと、曲をより深く楽しむ事が出来ます。それ以外にも、映画興行ランキングや年代別映画総論も面白いです。もの知りになれ、私もさながら映画解説者(笑)
しかし、何よりこのCDの良いところは、「沢山の映画を観たい!!!」という気持ちにさせてくれる事です。今年は時間を見つけて、このCDに収録されている曲が使われた映画を、一つ一つ観ていきたいですね☆
でもでも、折角なら2枚組にしてもっと沢山の楽曲を入れてもいいのではないでしょうかね???という事で、4☆です。
The Silence of the Lambs
このレビューの前に英語で書かれたレビューを読んで、「まったく、同意見!」と思い、つい書いてしまいました。私も映画より先に本を読み、映画では物足りなく思ったからです。本では、もっと詳しく描写されていて、怖さが染み入っただけでなく、事件に関係する背景がもっと詳しく出ていました。
クラリスが事件に関われば関わるだけ、手に汗を握り、まだFBI アカデミーの学生なのだから、そこまで何もやらなくても、と思ってしまいました。
羊たちの沈黙(上) (新潮文庫)
言うまでも無く、現在に至るまでのサイコスリラー〜シリアルキラー物の氾濫の端緒を作ったエポックエイキングな作品。
そして最も邪悪で優雅な「名探偵」ハンニバル・レクターが宿命的なヒロイン、クラリスと邂逅する歴史的傑作。
いささか生硬な文体であった(D・フランシスの「競馬シリーズ」などではそれがまた魅力に転じるのだが・・・)菊池光の訳より、初読の方には今回の高見訳をお勧めする。
ハンニバル・ライジング 完全版 プレミアム・エディション [DVD]
感情をあらわにするハンニバル・レクター見れるのは、この作品だけではないでしょうか。
他の3作品では、既に人間が完成されていて淡々とし、殺人方法に芸術性すら垣間見え、常に余裕がみられるハンニバルですが、この作品では復讐という欲望の赴くままに突っ走るハンニバルが見れます。いつ失敗するのかとドキドキものです。
その結果、作品の芸術性が薄れ、ただの猟奇的な映画になってしまっているのも事実ですが。