RURIKO
生まれついての美女、女優になるために生まれてきたというのは、こういう人なんだと感慨にふけった。
わずか4歳の時に満州で甘粕を魅了し、将来を嘱望されたほどの美少女、信子(浅丘ルリ子の本名)の半生が、小説の形態で語られる。
父親譲りの大きな瞳、日本人離れしたぽってりとした唇、映画、TV、舞台でと主演の座から下りた事がない大女優のたどった道を初めて知った。
小説の中に出てくる大スターが物凄い。
裕次郎、旭、ひばりの恋模様、ファーストキス、失恋、初体験どれもこれもが、映画の中の出来事のように煌めいて信子(ルリ子)の心と体をすり抜けていく。
「女優とは死ぬまで女優」であり、そのゴージャスな美しさで、つねに男から熱い視線を受け、今でも年下の美男俳優から愛される存在だという事が凄い。
裕次郎への恋心や、小林旭との恋愛の件も全く知らなかったので、すごく面白くてあっという間に読み終えた。
著者というフィルターを通したフィクション部分もあるのだろうけれど、そうした箇所がどこだったのかわからないほど、のめりこんでしまった。
日活の黄金期、映画界の斜陽期、TV界への進出、石坂との結婚、別居、離婚と激動の半生が、やはり人並みはずれた美貌だから当たり前に思える。
しかも小説の中のルリ子は、ものすごく自然体で、大スターという嫌みや傲慢さがない。というか、生活感が全くない。そういう部分が大スターという、庶民とはかけ離れた存在で手が届かない人、憧れであり続けてほしいという願いをもった著者があえて掘り下げなかった理由のような気がする。
普通の妻、主婦、母、祖母役は似合わないし、今後も演じてはいけない人なのだ。
常識人の父親が娘を普通の女性として、幸せに生きていけるように、見守り続けていた事が描かれていたが、彼女にとって大きな救いの存在だったのかもしれない。
キネマ旬報 2009年 8/1号 [雑誌]
本年度No.1の呼び声の高い映画サマーウォーズのキネ旬らしい熱のこもった記事がちょっと感動。巻末のライターのアマルフィ女神の報酬に脚本家がクレジットされていない事に対するコメントの「あのお粗末な出来では恥ずかしくて名前を載せられなかったのだろう」というのが一番面白かった。
巻頭の石原裕次郎特集は記録的な価値以上のものはなし。
甘粕正彦 乱心の曠野
佐野眞一の評伝の特徴は、描こうとする人物が何をしたのかということに主題があるのではなく、彼(彼女)を突き動かしたものは何だったのか、といった事実の裏にある人間性そのものを描き出そうとする点にある。
そして、著者は膨大な資料と格闘し、多くの関係者への取材を試みる。そうやって書かれる評伝はどれも非常に読み応えがある。ただ、そうして描き出された人物像が悪く言えば著者の思い入れが強く反映されることに加え文章も濃い(悪く言えばくどい)ので、好き嫌いが分かれる作家なのだと思う。
この作品もそうだ。例えば、“甘粕は底光りする内面の闇によって周囲の人間を魅了しただけではなかった。甘粕はその闇から放つ強烈な磁力で彼らの魂まで吸い尽くし、彼らを生ける屍のようにしてこの世に残し、満州の消滅とともにひとり逝った男だった(p324)”というような文章が随所にあらわれる。
そして、この引用した文章にある「磁力(あるいは磁場)」という単語は彼の作品に頻繁に登場する言葉なのだが、この言葉が佐野眞一の作品を最もよく表している。彼の作品になじめない人には、これが、単なる著者の勝手に思い込みさらに言えばこじつけに感じられるのではないかと思う。
わたしは、ノンフィクション作家は歴史研究家でも学者でもなく、もちろん事実(資料との格闘・関係者への取材)の積み上げが前提にはなるが、評伝という作品形態においては、その対象とする人物を作者がどのように解釈(それがたとえどう読んでもそれは思い込みだろうと突っ込みをいれたくなっても)するかは作者の特権であり、読者はその解釈の正誤を判断する前にそれをひとまず受け入れた上で作品として優れているかを判断すべきと考えているので、彼の評伝は読んでハズレタと感じたことはない(ただし、東電OL〜に代表される彼のルポ物は別。磁力「磁場)にこだわる彼のルポ物は実に読むに耐えない)。
この一冊も実に佐野眞一らしい作品だ。ただ、甘粕のパーソナリティを知る上での重要なファクターではあるが大杉事件の真相が主題ではなく、あくまで佐野眞一が描く甘粕正彦像が主題なので、大杉事件や満州で甘粕がかかわったとされる謀略そのものに関心がある人にはあまりお勧めできない。
すいか DVD-BOX (4枚組)
このドラマ、はまりました
聞くところによると、あまり視聴率はよくなかったとか?
私にとっては、近年最高傑作なドラマだったのに
都心とは思えない「ハピネス三茶」、
下宿の彼女たちや、周りの個性的な面々
何気ない日常、それと隣りあわせにある非日常
理由はよくわからないけど、
なんだか涙が出そうになる一瞬もある、
そんなドラマです
デンデラ [DVD]
原作も結構話題になったが、映画は更にインパクト重視。
何しろこの顔ぶれがこの映画ヤル気になった事自体がほぼ事件である。
特に往年の浅丘ルリ子ファンの方は絶対見てはいけない。
いろんな意味で恐ろしい映画である。
原作では魅力の一つとなっていた''赤背'≠ェギャグになってしまったのは残念。
そう云う事なら最初から原作無視して「丑三つの村」にしちまっても良かったのでは?
原作に沿ってはいるものの、腑に落ちないストーリーになってしまったので減点。
もうひとつ、突き抜けて欲しかった。惜しい!