おんな泉岳寺 (集英社文庫)
誰もが知っている「忠臣蔵」。
吉良は討ち入りまでの一年半あまり、どう過ごしていたのか。
巷に高まる悪役・吉良の世評に対して、内心言いたいこともある吉良の妻・富子の目を通して描かれる
短編など、他3編収載。
それぞれの夫を亡くした浅野内匠頭の妻・瑤泉院と吉良上野介の妻・富子。なぜ富子は泉岳寺に参るのか。
吉良と長年連れ添った六十過ぎの富子とまだ女盛りの瑤泉院との対比や、互いを慮るおんなたちの
こころが、読後に何ともいえない余韻をもたらす。
他3篇、いずれもままならぬ浮世のならい、市井の名もなき一青年から、清水一家の大政、そして
元老・西園寺公望まで、人はすべからく時に流され、飲み込まれてゆくものと、諦念と覚悟の交々が描かれている。