荒地聖と白鳥の歌 飛鳥聖羅 Akira Asuka
詩と朗読 飛鳥聖羅(あすかあきら) ここに詩を載せています。 「荒地聖と白鳥の歌」 ある星の谷間に広がる荒地にひときわ輝く白馬がいるその故に荒地聖(あれちひじり)と名づけられた美しい白馬だその白馬 白鳥が鳴くのを聴いていななく これひとつの不思議白鳥の鳴き声と白馬のいななく声を聴いて輪陀王は威光勢力を増していく白鳥が天使となって舞い降りたみずうみに日が射し込み幻想劇の幕が上がる 白鳥の声は金管楽器のひびきの音色空も水も透き通り 汚れを寄せつけぬ雪化粧のみずうみに白鳥は翼をたたみ しずかな澄明の時刻を刻むながれる雲に風のそよぎ 息づく鳥の鼓動にめざめる息吹荘厳は太陽によって齎され 壮麗は白鳥によって極められる生きてあるものの美しさをすがたに滲ませて鳥たちは乱舞飛翔の時を待つ いまぼくは眼をこらし眺望するダイヤモンドが粉々に砕けてもこれほどの美しさを放てようか空が割れて恋に落ちた人のごとくにぼくは見とれ 酔い痴れ鳥たちを観る その白鳥の歌 覚醒を促す弦のひびき愛しい人を呼ぶ声に似て冬の空気の冷たい鼓膜を震わせるウルクの王ギルガメッシュの冒険を記した古代バビロニアの叙事詩を朗誦し ぼくはルネサンスの画家ギルランダイオの絵を真似た細部描写の美的陶酔から目を醒ます ひとり佇み白鳥の愛と飛翔の美学の酒に酔い痴れた冬の朝の湖畔に白鳥は臨終に際して自分の声を歌に表しそれがはじめの終わりだという伝説がある 空から舞い落ちながらもの悲しく音楽的な歌声を響かせる白鳥の歓びの歌こそ聴くべきだ 白馬もいななき人も魂を震わせるほどの美しい歓びの歌を聴くべきだ ぼくたちの星の荒地にいるならば青い星の谷間に広がる荒地に駿馬と称えられる白馬がいるその故に荒地聖(あれちひじり)と名づけられた美しい白馬だ飛来してきた白鳥はその ...