月光の囁き ディレクターズカット版 [DVD]
『黄泉がえり』での役者は全部ダメだけど画のほうはが妙に面白いという浮き上がった印象があって気になっていた塩田明彦の商業用長篇劇映画第一作。これは面白かった。まず瑞々しい青春映画のフォーマットに沿ってはじまる序盤が素晴らしい。特に川か堀端を主人公カップルが画面奥から手前へと道なりにゆっくり歩く移動シーンや、二人乗りの自転車で画面を横に走り抜けるシーン、畦道を紗月が「どこまでもいこう」を歌いながら歩き、すぐ後ろを拓也がついていくシーンなど、良かったシーンをあげればキリがない感じがするくらいで、おかげで以後の濃密な変態物語の展開もあまり嫌な感じにはならず、相当変ではあるもののやはりこれも「青春の一頁」として観てしまった。紗月に別れを言い渡された後、あきらめきれずに「犬になりたい」と拓也が告白するシーンでの雨は本当に素晴らしかった。主人公二人の存在感は抜群。噛ませ犬役の植松はビミョーにズレていて、役どころ的にはいい面の皮というか馬鹿なんだが、なんだかかわいそうな感じもした。クライマックスの滝のシーンでは、滝をほとんど画面に登場させずに水がおちる音をずっと響かせるという手法を取っていて巧いと思った。DVDに付録で付いていたトークで、塩田監督は劇場公開版ではクライマックス前の紗月とその姉との会話のシーン(本当は拓也が好きなんでしょ?と姉が紗月に言うシーン)をカットしていた、という話をしていて、実際そのシーンがあったほうがテンポも良いし展開もすっきりすると思うので、ディレクターズカット版が良いと思う。
大聖堂 BOXセット (ソフトバンク文庫)
NHK-BSの放送は見ていませんが、荘厳、且つパワフルで圧倒される本です。
上中下、全3巻、ページ数にして2000ページ弱、一気に読破してしまいます。
タイトル通り、読み始めたら止まりません.何度か徹夜してしまいました。
今、3度目の読書中、それも原文(英語版1000ページ)と並行して読んでいます。
矢野浩三郎氏の翻訳も、原文を読んでみるとその素晴らしさが実感出来ます。
原文は知らない語彙も多いのですが、ページ毎、各々の登場人物の会話で興奮させてくれる作品です。
月光の囁き ディレクターズカット版 [DVD]
いうまでもなく原作は喜国雅彦の同名コミック(小学館ヤングサンデーコミックス/全6巻)で、主人公は剣道をする一見普通の男子高校生。しかし、彼は好きになった女の子の「犬」になりたいという衝動を抑えきれずに、せっかく成立した「普通の恋愛」関係を壊してしまう。そのマゾヒスティックで「変態」的な行動様式に説得力とリアルさがあり、いったん壊れたふたりの関係がどうのような軌跡を描いていくかが主題。描写にすごく緊張感があって、作者はよく心の動きをつかんでいると思う。そういう漫画だが、映画は、原作のエピソードをかいつまみつつ、若干登場人物を整理して、「うまく」創っていると思う。
恋愛においては「変態さ」みたいなものはいわば<つきもの>であって、それを過剰(ホンモノの変態)になる一歩手前のところで思春期的「痛み」や「甘酸っぱさ」に回収している。悪い意味でなく、良い意味で。主題歌のスピッツ「運命の人」というのがそれを象徴している。逆に言えば、スピッツ=草野マサムネ的「変態さ」がしっくりこないひとには、原作漫画もこの映画もわからないかも知れない。「わかる/わからない」といったら、少しイヤミないいかたになるけれども、映画の最後にこの主題歌が流れることでじわっと涙が出てくるような映画だと思う。ただ、漫画に比べて、主人公への感情移入を誘わないところがこの映画にはあって、それはなぜだろうと思う。
月光の囁き (1) (小学館文庫)
4コマや、ショートショートの作品が多い喜国氏の作品のなか、珍しいシリアスストーリーものです。
物語は主人公の男の子[中学生]が、同級生の女の子を意識しはじめるところから始まります。しかし、主人公は自分の性の芽生えと、その傾向や行動が人とは違うのではないか?変態なのではないか?と疑いを抱いています。そんな主人公の少年は、自分のような秘密を持った異常な人間が、彼女とフツウにつきあっていても良いのだろうかと苦悩しつつも、二人の関係は深まってゆき‥‥。
作者自身が、”谷崎文学の世界を描きたかった”というだけに、常人にはかなり、キワどいと思われる性描写がありますが、主人公が少年と言うことと、作者独特の画風により純文学的SMという一種独特の世界が、抵抗なく理解し楽しめる作品だと思いますよ。わたしは。
ぜひ、一度読んでみてください。
東京マラソンを走りたい ギャグ漫画家 50歳のフルマラソン (小学館101新書)
漫画を読まなくなって10年余、書店の新書棚を散策してたのだから、頭の中は鳩山政権の金融政策は何とかならんのかーとか時事放談モードだったはず。まさかそんなときにキクニの名前と再開するとは!おいおい、ほんとにあのキクニか?ヤングサンデー史上不朽の名作「傷天」の天才キクニが走ってるのか?これが予期に反して本気(マジ)であり、予想以上におもしろい。もちろんオレも走り始めたぜ〜!