父親の復讐は“正義”か“悪”か― そして待
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前半の父親の怒りの爆発に対し、後半があっさりとしすぎて拍子抜けした。
最後はもっと盛り上がって、読者達の復讐への期待に応えるべきでは・・と思ったとき、気が付いた。
これは、小説ではあるけれど、現実に、いつ誰が同じような目に遭ってもおかしくない悲劇でもあるのだ。
だからこそ、東野氏は、ただのエンターテイメント小説としての物語の大団円を拒否し、
現実にも得てして起こりそうな不完全燃焼のこのラストを持ってきたのではないか。
これは、読み終わって、「ああ面白かった、すかっとした」と
ぱたんと本を閉じてしまえば終わりの勧善懲悪ではない。
もっと読者に考える事を要求している。
あなたなら、この未成年犯罪者をゆるせますか？
さまよう刃 関連情報
本気でなければ、このような小説は書けない。
東野圭吾のすごさを感じた。
これはもう単なる小説ではない。
世に問う本気の書だ。
大切な人が暴虐非道な殺され方をしたとき、犯人に対してどう思えるか、どう対処できるか。
「正義」とは何か？
遺族に「救済」はあるのか？
「人を殺すこと」とは、その「復讐」とは、どういうことなのか？
少年法はじめ法律の基本概念が、被害者側の救済に全くなっていないことを改めて知り、暗然となる。
そして、読み手１人１人のむき出しの価値観を問われる。
それにしても描写がきつい。
本当にむごい。
受け付けられないと感じたこともあったが、読後は、読み手に追体験させるため、必要だったと感じる。
それほどにむごいことなんだと知らなければ、この小説の問題提起は表層的に終わってしまう。
罪悪感のない身勝手な犯罪の罪深さが、これ以上ないほどの怒りをかきたてる。
ただ、巻末に「解説」が欲しかった。
こういう内容だからこそ、読み手の思索をまとめさせる意味でも、冷静な第３者の意見が欲しかった。
これは、大いに議論しないといけない書だ。
（ラストの謎解きも含めた警察同士の対話に、その要素を含めたのかとも思う）
最後に、もし主人公が死んでなかったら、どのような人生を送ったかを考えると重い。
どうしようもないところまで追い込まれ、撃たれることで救われたという感があったかもしれない。
悲しすぎる結末だ。
さまよう刃 (角川文庫) 関連情報
あれだけ分厚い原作本を2時間半の映画にまとめるというのは至難の業で、実際に見てみると、やはり「ちょっと詰め込みすぎなんじゃないの」という感じを覚えました。しかしその分だけ、原作に近い世界観を描くことに成功している作品とも、言えると思います。
冒頭の雨の中を走るパトカーのシーンからして、実に雰囲気があって、一気に物語の世界に引き込まれてしまいました。監督によればフィルムに特殊な処理を施しているそうですが、特に昭和の時代のイメージというか、あの懐かしい時代の空気感を再現することに成功していて、それがこの作品の大きな魅力のポイントになっています。
美術的にも見るべきところが多く、原作を知る人なら非常に興味深く感じられるはずです。亮司の父が殺された廃ビルや、不倫が行われていたあの質屋の内部、屋根裏にある亮司の子供部屋、雪穂が子供の頃住んでいたスラム街のバラック、学生時代の雪穂の通学路、乱交パーティーが行われたアパートの一室、雪穂の嫁ぎ先のブルジョア屋敷などなど、原作の匂いの濃厚な舞台設定が、枚挙に暇がないほど出てきます。
特に小道具では、子供の頃の亮司の趣味ということで、“切り絵”が重要なアイテムとして使われていたのが、強く印象に残りました。『風とともに去りぬ』の1シーンの切り絵などは、雪穂との秘密の絆を表していてすごくロマンティックでしたね。
さて、今回の映画版の大きな特徴になるのが、船越英一郎扮する刑事の存在です。初めは狂言回し的な役割で、各時代で亮司の父屋の殺人犯を追う刑事として登場するが、最後には、亮司と雪穂の関係を突きとめて、彼らの悲しい人生のただ一人の理解者になってしまうという、とても重要なキャラクターです。彼は父親のような愛情で、愛を知らない亮司に救いの手を差し伸べようとするのだが…。
全編を通して見られる、堀北真希と高良健吾の2人の“暗くて冷たい目”が本当に悲しすぎます。彼らには本当に彼らを照らす太陽などなくて、彼らにはきっと彼ら二人しかいなかったんでしょうね。
堀北さんが原作を愛していたという事実は、後で知りました。そんな彼女が雪穂をどう演じたのか、一度見ただけでは簡単には把握しきれなかったし、堀北ファンの私としてはその辺が一番興味のあるポイントでもあるので、ぜひとも何度か見直してチェックし直したいです。あと、本編でカットされた彼女がレオタードで社交ダンスを踊るシーンもきっと収録されるでしょうから、そちらも楽しみにしています。
白夜行 [DVD] 関連情報
犯人の手記と刑事の報告書がストーリーを展開していく小説ならではの手法で見事騙されました（ゆえにTV等ではあまり効果的ではないと思いますが）。
ミステリーでは大体犯人は誰か、どのようなトリックを使用したかがストーリーの主体とされますが、この小説のようにはじめに犯人が捕まった後、どんな展開をしていくのかと期待でワクワクしながら読みました。犯人は他にいるのか、なにか理由があるのか、そんな事を頭のスミで考えながら最後まで楽しみめました。
典型的な犯人探しミステリーより、このような先の読めないお話のほうが個人的にはおもしろく思います。（つたない文章で失礼しました） 悪意 (講談社文庫) 関連情報
2年前に妻を乳癌で失い、
たった一人の肉親だった愛娘の命を
未成年者による性犯罪で奪われた父親の
復讐を描いた物語。
この作品の作者や制作スタッフは、
今日の未成年者の犯罪に対する社会的な制裁が、
果たして十分なのか、また正しいのかという問題について、
社会全体で考えてほしかったのだろう。
そしてその目的は果たされているのではなかろうか。
娘を最悪な形で失った父親の深い悲しみと憤り、
そして我が日本の法制度の正当性を考えさせられた。
作品上、竹野内豊と寺尾聡の関係性が曖昧だったが、
それを差し引いても、寺尾聡の演技はすばらしかったし、
作品のメッセージは重く、そして尊い。
作品のトーンがかなり暗いため、
必ずしも万人受けするわけではないだろうが、
たいへん優れた作品だと感心したし、
未成年を含む多くの人々に観てもらいたいと感じた。
さまよう刃 [DVD] 関連情報
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