本に書き込む勇気 vol.042 日本に就いて 吉田健一 著 ちくま学芸文庫 国語の学童 よみかきのもり 本を買って読むには勇気がいるブログ動.
上林暁 ランキング!
好みは分かれるだろうが、私は上林暁のような人間に惹かれる。この短篇集を読んでそう思った。坪内祐三の編集の妙も見事である。
上林の短篇の魅力は、己の至らなさをああだこうだと書き連ねながらも、最後にハッとするような美しさの結文を配した結びの段落を据える巧みさにある。例えば、「たばこ」の最終段落は以下の如し。
実際一頃の私は、天地晦冥であった。夜の寝支度をしながら、「朝が来たとて何んの楽しみもないが。」などと独り言を言って、膚触りの冷たい蒲団の中へ潜り込むこともあった。夜なかに、ふっと眠りから醒める。前途の多難を思って、息の根の止まりそうなこともあった。毎日午後の三時頃になって来ると、身の置きようもないほど遣る瀬なくなった。それも天気が好ければまだしも、あの陰鬱な雪つづきでは、泣き出したいほどだった。天候の影響などと言った生易しいものではなかった。天候が自分の健康の工合そのものとも思われた。命を縮めても構わないから、一本の煙草が欲しくなるのは、そういう時々であった。そして現に、それによって苦渋を凌いで、春萌えの命となりつつあるとも言えるのである。(289−290頁)
「禁酒宣言」や「春寂寥」などの結びにも見事な余韻が漂っている。この作家の文学にかける思いが立ち現れてくるようだ。
なお、本書収録作品は、「女の懸命」「暮夜」「禁酒宣言」「いさかい」「春寂寥」「魔の夜」「お竹さんのこと」「愉しき昼食」「酔態三昧」「春浅き宵」「女の甲斐性」「たばこ」「蹣跚」の13篇である。いずれも昭和20年代に発表されたものである。
禁酒宣言 (ちくま文庫) 関連情報
夏葉社さんの書籍に対する愛情が伝わってきて、装丁を見ただけで少し感動しました。ずっと大切にしたい一冊になりました。内容はまだ読んでいない状態でレビュー書いてますけど、ゆっくり味わいながら読みたいです。 上林暁傑作小説集『星を撒いた街』 関連情報
ことばに力がある本でした。
実は、2歳の孫に頼まれて注文した本ですが、孫曰く「ホントにことばに力がある私小説作家なのですが、今の日本人には読みこなせないようです。全集を出版した筑摩の慧眼はすごいです。残念ながらこの国では猫に小判だったようで、今は版元品切れです。病妻ものなど凄みがあるのに、値打ちが分からんって悲しいことですね」でした。
文庫の古書なので、どんな本が来るか心配でしたが、綺麗な本で良かったです。
配達日も予定より2日早かったし。
梱包も丁寧でした。
ありがとうございました。
聖ヨハネ病院にて・大懺悔 (講談社文芸文庫) 関連情報





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